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2018年11月号 ドイツにおけるAutomotive SPICE活用の状況(平田)

はじめまして。私は先⽉から当社のコンサルタントとして活動を開始いたしました平⽥と申します。それまではドイツの⼤⼿サプライヤーに所属し、現地で⻑くプロセス改善活動に従事して参りましたので、ご挨拶を兼ねてドイツにおけるAutomotive SPICE(以下ASPICE)活⽤の状況を紹介させていただきます。
私はドイツへ渡る前に⽇本の企業に勤務しておりましたが、ドイツ現地での⽣活や業務を通じて⽇本との⼤きな違いを感じてきました。今回のメルマガでは、ASPICE に対する思想の違いについてご紹介していきたいと思います。

まず、⽇本の企業におけるASPICE 対応のモチベーションに着⽬すると、顧客からの能⼒レベル達成の要求に応えなければならないということがASPICE対応の最も⼤きな要因になっているかと思います。そのため、顧客の真の要求内容やその意図・背景を完全に把握し、顧客と共通認識を⼗分持たないまま業務を⾏うと、プロセス改善にはやらされ感があり、開発現場においても通常業務に加えたASPICE対応業務に追われることになっていないでしょうか。
ドイツの企業においても、顧客から能⼒レベルの達成を要求されるということには違いはありません。ただ、ドイツ企業では開発業務を進めるための活動の⼀環としてプロセス改善を捉えることが多く、必然的にASPICEアセスメントも活動に組み込まれていきます。開発業務を確認する必要な⼿段としてASPICEアセスメントを位置づけているのです。その結果、能⼒レベル3は特別な意識を持って達成するという感覚ではありませんでした。また、誰が作業を⾏っても均⼀なレベルの作業成果物を⽣成しようとするため、各プロセスに付随する各種ガイドライン、マニュアル、テンプレートなどは作業に着⼿する前に整備され、企業としてプロセス資産のノウハウが蓄積していきます。さらに、⼈材育成の制度の⾒直しや作業成果物の完成度をさらに⾼める仕組みも定着することで、開発期間中のプロセス改善のスピード感を顕著に感じることがありました。

このように、⽇本とドイツではASPICE対応のモチベーションに違いがあり、改善のスピード感ではドイツの企業が秀でている場合が多いのです。ただ、逆に⽇本にも隠れた強みがある事に気づかされます。
開発者の想いや開発の背景、根拠までもがストーリーとしてデータベース管理されていて、それにヨコテン(問題事項あるいは最善策を他部署に展開)する⽂化があることです。これはASPICEのSUP.9の観点において秀でている場合が多いです。

顧客からの要求を基にASPICE対応に臨む場合でも、それぞれのプロセスにおける⾃分たちの⽬的、達成すべき⽬標を明確にしておく必要があります。これは、ASPICEのGP2.1.1の観点に該当します。この実施⽬標には、個々のプロセスにおける期限や期間、⼯数、コスト、⼿法、ルールなどが含まれます。またこれと合わせて達成すべき品質基準も明確にする必要があり、これは、GP2.2.1に該当します。
このような⽬標や基準を明確にすることでプロセスの必要性が明らかになりますので、当事者意識も⾼まり、顧客要求が基であってもASPICE対応のモチベーションは⾶躍的に向上するのではないでしょうか。
今後のメールマガジンでもドイツにおけるASPICE活⽤の状況に基づいた改善のヒントをご紹介致します。

2018/11/7 平⽥ 博