ホワイトペーパー

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プロセスの有効性と親和性

ISO 26262では、安全⽂化の構築と維持のために、組織としての継続的なプロセス改善活動が求められています。この活動は、⼀回きりのものでなく、継続的、すなわち終わりのない活動となります。継続的なプロセス改善に関する要求事項は、ISO 26262だけではなく、Automotive SPICE や CMMIにも重要な要求事項として記載されていますが、その意図とは、プロセスを定義するだけではなく、そのプロセスがプロジェクトや組織のニーズや⽬的を満たしていることを確認するために、定期的にプロセスを評価し、プロセスを改善していかなければならないということにあります。

プロセスは、プロセスの評価・改善を実施することによって、プロジェクトへ負担を強いるものではなく、プロジェクトの 成功要因として貢献すべきものになります。逆に、この部分が⾒落とされてしまいますと、改善活動⾃体が無意味で⾮⽣産的な結果に終わってしまうのです。多くの組織では、プロセスを定義することは簡単なことであると考えてしまいがちですが、プロセス改善を継続的に実施し続けることは、プロセス改善の推進グループにとって最も苦労する点となります。

継続的なプロセス改善に基づかず、形だけ短期間に構築したプロセスは、すぐに形骸化してしまいます。さらに、過去にAutomotive SPICEやCMMIで⾼いレベルを達成した組織でも、プロセスが定着していない組織ではプロセスが形骸化してしまうのです。これは、ISO 26262の求める安全⽂化の観点において、安全⽂化が確⽴できていない組織となります。それでは、プロセスを形骸化させないためには、どのような継続的プロセス改善が必要なのでしょうか。

ここで、プロセスが定着せず、形骸化してしまう理由を考えてみましょう。
よくある理由の1つは、プロセス改善を⾒える化し、継続させていくための仕組みやインフラがないことが挙げられます。このことについては、ASPICEでは、この仕組みやインフラを前もって準備しておくことを特に重要視し、GP3.1.5(適切な⼿法の決定)で規定しています。より広い意味では、プロセス改善のパラダイム(対応策)の⼀環として、適切なインフラ、⼿法、仕組みを構築して前もって備えていくことが求められているのです。そして、プロジェクトや組織の取り組みを無駄にすることなく、プロセスの効果や実施しやすさ(親和性)を適切に⽰すことも重要です。プロセスの実施者が、プロセスの⽬的や意図を理解し、その効果や実施しやすさに納得して初めてプロセスが組織に定着していきます。つまり、プロセスの実施者が納得するプロセスの構築が、安全⽂化定着の重要なカギを握ると⾔えるでしょう。

プロセスの効果や実施しやすさを把握するためには、プロセスに関する様々なデータ(⼯数、不適合事項数、不具合数などのプロセスのパフォーマンス指標)について関連性分析を実施する必要があります。プロセスの効果と実施しやすさの⼀⽅だけを考慮すれば良いというものではありません。たとえば、実施者にとって実施しやすいが効果が少ないプロセスや、逆に実施しにくいが効果が⼤きいプロセスなど、プロセスの偏りは、時には、主要⽬標を満⾜し⽣産性を備えたプロセス・安全⽂化を構築する上で⼗分効果的でないこともあるのです。

ここで、変更管理と問題解決管理のプロセスを例に挙げて説明します。
変更管理と問題解決管理は、制約や緊急性がない時にはしっかりと遵守されますが、すぐに対応しなければならない変更や問題が⽣じた場合には、これらのプロセスはある種の制約となってしまい、効果的なプロセスとして捉えられず、別の⽅法に則ってその事態に対処してしまいがちです。このようなプロセスの振る舞いを把握するために、定量的なデータや定性的なデータなど、あらゆる観点のデータが必要になります。
つまり、プロセスの振る舞いの把握には、ひとつの情報源からのデータだけでは役に⽴たないこともあるのです。

安全⽂化を定着させるためには、プロセスの効果を適切に⽰し、プロセスの実施者が納得できる仕組みとして改善し続けることが重要ではないでしょうか。
(2012年03⽉号メルマガ抜粋)

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