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セーフティクリティカルな産業分野向けプロセス構築セミナーの開催(小西)

2019年7月16日に、「業界の垣根を越えて、国際規格とツールを用いて開発の変化に対応」をテーマに、弊社と株式会社IDAJ(以下、IDAJ)による共同セミナーを開催いたします。
航空機や自動車は、安全性が重要視される産業分野の製品です。近年では、安全性だけでなく、世界的にCO2削減も製品開発の共通要件となっており、航空産業では、電池やモーターなどの電動化技術が重要な鍵になっています。電気自動車やハイブリッド車開発で培ってきた信頼性・安全性設計の知見が、これからの航空産業で生かされるでしょう。また、両産業分野におけるもう一つの共通要件は、国際的な安全規格に準拠して、製品を開発する点です。その適用は、航空産業が先行して1990年代から始まり、規格適用を支援する開発環境やツールは、航空産業分野の発展に伴って成熟しています。このノウハウは、「適切な道具」を効率良く活用し、高い生産性で、安全な自動車を開発する自動車産業に活用できます。両産業の安全規格に準拠した製品開発では、「安全設計をすること」に主眼が置かれており、「なぜその設計が安全なのか」について、客観的に検証できることを重要視した組織標準プロセスの構築に、適切なプロセスモデルを適用することが、安全な製品開発に成功するための鍵になります。顧客要求、プロジェクトの特性に応じて、構築した組織標準プロセス内の一部または、連続した活動に、モデルベース開発手法(以下、MBD)を実装し、その活動を省略または、自動化するテーラリングは、安全な製品を効率よく開発するために必要です。そのためには、モデル表記をどのような目的で、どのプロセスで活用するか、またモデル言語の構文や意味づけの曖昧度を考慮して、テーラリングすることが重要です。

本セミナーでは、「国際的な開発プロセスフレームワーク」と「最新設計手法を実装したツール群」を活用して、最適なプロセスを構築するためのヒントになる下記4講演を予定しております。

1. セーフティクリティカルドメインへのAutomotive SPICEの適用事例紹介とMBD適用の勘所(ビジネスキューブ・アンド・パートナーズ)
2. 認証取得済みツールの適用によるソフトウェア設計開発プロセスの効率化とソフトウェア品質の向上(IDAJ)
3. Mechanical SPICE活用のすすめ(ビジネスキューブ・アンド・パートナーズ)
4. PLM・SPDMによる設計開発プロセスの標準化(IDAJ)

前半の2講演は、Automotive SPICEの他ドメインへの活用とMBDを実装してテーラリングする際の勘所に焦点をあてます。後半は、ソフトウェア開発ドメインから、メカ開発に焦点を移して、メカ系開発における課題と事例、Mechanical SPICEを解説いたします。これらのトピックに関連して、ツールベンダー視点でのソリューションをIDAJから講演頂きます。
各講演の概要は、下記のセミナー参加申し込みページにて、ご確認頂けます。
https://www.idaj.co.jp/academy/seminar/theory_practice_detail.html?courseid=203

セミナーで弊社が講演する予定の「セーフティクリティカルドメインへのAutomotive SPICEの適用事例紹介」について、本メルマガでもう少し詳細に解説します。
航空装備品(航空機搭載の組込みシステム)メーカーが、装備品を開発する際に、システム開発と安全性解析、ハードウェア開発、ソフトウェア開発の各ドメインで、独立に規程された安全規格を適用しています。その中でも開発規模が大きいソフトウェア開発では、DO-178C(Software Considerations in Airborne Systems and Equipment Certification)の適用が進んでいます。DO-178Cの特徴は、目的指向のアプローチを取っていることです。規格を適用する場合は、全ての目的を満たすことが要求され、目的を達成するアクティビティを計画します。そして、その計画に沿って、アクティビティを実行し、目的が達成されていることを示す証拠を提供する必要があります。目的を達成する手段や手法は、自由に定義することができます。しかし、DO-178Cは、安全設計や不具合の検出という視点で目的、活動、アウトプット(成果物の特性と内容)を定義していますが、管理、組織・体制の側面では、定義が不足しています。活動の定義が不十分なプロセスの一例として、「ソフトウェア要件プロセス」を挙げることができます。ソフトウェア要件プロセスは、上位(システム設計プロセス)の成果物を入力として、ソフトウェア要件(機能、性能、インターフェース、安全関連要件)を作成する、派生要件を定義し、それらを上位にフィードバックすることが目的です。成果物特性と内容は、規格に定義されていますが、要件のグループ化、優先付けなど後工程に影響を与える要件分析の活動については、十分に定義されていません。DO-178Cを読んでいくと、このようなケースが他のプロセスでも見られ、どの程度の活動まで実施すれば良いかの判断が難しいと感じます。そこで、Automotive SPICEを物差しとして活用して、各プロセスで不足している活動や観点を補うことができます。なぜ、Automotive SPICEをDO-178Cの解釈に活用するのでしょうか?Automotive SPICEは、プロセスで何を実施すべきか、なぜ実施しなければならないのかといったプロセスの目標を定義しています。DO-178Cは前述の通り、目的を達成する手段や手法は、自由に定義できるので、Automotive SPICEを活用して、プロセスで何を実施すべきかという分析に基づいて、適切な達成方法を考えることができます。活用する際は、Automotive SPICEの各プロセス成果(Outcomes)の内容をあるべき姿として、DO-178Cの各プロセスに定義されている活動を比較し、不足している活動を追加します。この方法を各プロセスに適用して、プロセスに必要な活動を明確にし、その上に、DO-178Cで要求されている安全設計活動を実装することで、DO-178Cの目的を達成する標準プロセスを構築することができます。実際に、DO-178Cの内容をこの方法で分析してみると、Automotive SPICE 能力レベル2を、各プロセスが達成していれば、DO-178Cの目的を満たすことが分かります。より具体的な分析内容をセミナーの中で解説いたします。
ぜひともご参加くださいますようお願い申し上げます。

2019/06/10  小西 晃輔