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VDA Automotive SYS ConferenceにおけるAutomotive SPICEの最新動向(田渕)

先月6月26日から28日の日程で、ドイツのポツダムにて第9回VDA Automotive SYS Conferenceが開催されました。
今年のカンファレンスでは、これまでのAutomotive SPICE、機能安全、セキュリティ、アジャイルのトピックスに加えて、自動運転やそれに伴う人工知能に関する発表が見られました。

Automotive SPICEに関連するモデルの動向としては、Automotive SPICE V3.1に対応したプラグインモデルとして、すでに公開されている機械システム開発向けのPAM(SPICE for Mechanical Engineering:以下 ME SPICE)に加えて、電気・電子系ハードウェア開発向けのPAM(Hardware SPICE)、サイバーセキュリティ向けのPAM(Cyber Security SPICE)、そして、アジャイル開発向けのPAM(Agile SPICE)の発行に向けたワーキンググループの活動が報告されました。
Hardware SPICEは2019年の年末、Cyber Security SPICEは2020年の中頃、Agile SPICEは2020年の上半期にそれぞれ最初のドラフトを公開する予定です。

このように、Automotive SPICEはプラグインコンセプトの導入によってカバー範囲を広げ、車載システムの開発に広く適用できるプロセスモデルへと変わっています。
本来、SPICEはSoftware Process Improvement and Capability dEterminationの略であり、適用対象としてソフトウェア開発を想定したものでしたが、現在のSPICEは、ソフトウェアではなくシステム全体を指すものへと完全な変化を遂げたというコメントもカンファレンスの中ではありました。
なお、これらのプラグインモデルは、現時点ではAutomotive SPICEの外部に定義された任意のモデルという位置づけにありますが、Automotive SPICEの発行元であるVDA QMCは、これらのプラグインモデルが将来的にAutomotive SPICE本体へ集約されていく可能性を示唆しています。

カンファレンスでは、機械システム開発向けのME SPICEについてのワークショップが開催され、機械システム開発における典型的な課題やそれらの解決にME SPICEを活用するためのアイデアが議論されました。
ワークショップ参加者からは、以下のような課題が挙げられていましたが、その多くは日本の開発現場でも共通してるかと思います。
・図面から描き始めるため、機械システムの要件を整理、分析した上で、設計に落とし込まれていない
・機械コンポーネント、電気電子ハードウェア、ソフトウェアにまたがった成果物の管理が行われていない
・試作によるトライアンドエラーに頼った設計になってしまい、設計完了までの工数が予想できない
・品質保証が現物の確認のみになっており、品質に再現性がない

弊社では、システム開発、ソフトウェア開発プロセス以外に、各種プラグインモデルのPAMの活用に向けたセミナーを随時開催する予定です。
その第一弾として、来る7月16日にME SPICEに関するセミナーを開催いたします。
上記の課題のうち、機械システムにおける要件定義、設計への落とし込み、これらに付随するトレーサビリティ構築、構成管理に焦点を当て、プロセス改善のためのヒントを解説させていただく予定です。
この機会にぜひご参加をご検討いただければ幸いです。

[セミナーの詳細とお申し込みはこちら(IDAJ社サイトからの申し込み)]
https://www.idaj.co.jp/academy/seminar/theory_practice_detail.html?courseid=203

2019/07/03  田渕 一成