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Automotive SPICE 4.0対応に向けての準備 Part2
―Mechanical SPICEの位置づけと活用について―

今月のメルマガ8月号にて、Hardware SPICEの位置付けと特徴についてご紹介させていただきました。
今回のメルマガでは、メカ領域のプロセスモデルであるMechanical SPICEを取り上げ、Mechanical SPICEの位置づけとその活用についてご紹介致します。

最初に、Mechanical SPICEの位置づけについて説明します。現在は、図1に示すように、Automotive SPICE 3.0以降で導入された「プラグインコンセプト」により赤枠で示したメカニカルエンジニアリングの領域においてMechanical SPICEが適用されます。メカ領域の開発におけるプロジェクト管理、サプライヤ監視、支援プロセスは、Hardware SPCIEでご紹介した内容と同様にAutomotive SPICEを参照します。メカニカルエンジニアリングについては、以下の9つのプロセスが、Mechanical SPICEで定義されています。

・MSE.1:機械システム要件分析
・MSE.2:機械システムアーキテクチャ設計
・MSE.3:機械システム統合および統合テスト
・MSE.4:機械システム適格性確認テスト
・MCE.1:機械部品要件分析
・MCE.2:機械部品設計
・MCE.3:機械部品サンプル製造
・MCE.4:機械部品設計に対するテスト
・MCE.5:機械部品要件に対するテスト

上述の内容でわかるように、メカニカルエンジニアリングのプロセスは、機械システムエンジニアリングプロセス群(MSE)と機械部品エンジニアリングプロセス群(MCE)から構成されています。機械システム製品の設計・開発において、IATF16949 8章(運用)の要求事項に対して必要な活動が二つのプロセス群によって網羅されています。

機械システムエンジニアリングプロセス群(MSE)は、システムレベルの顧客要件、及び内部要件を管理するためのプロセス、それらの要件を実現するための機械システムアーキテクチャを定義するプロセス、ならびに機械システムレベルで統合及び統合テスト、及び要件に対してテストを実施するためのプロセスで構成されます。

一方、機械部品エンジニアリングプロセス群(MCE)は、部品レベルの顧客要件、及び内部要件を管理するためのプロセス、機械部品設計を定義するプロセス、機械部品を製造するためのプロセス、ならびに機械部品設計、及び要件に対してテストを実施するためのプロセスで構成されています。なお、MCE.3は機械部品の製造は、量産フェーズではなく、試作が対象です。製造戦略がプロセスの成果物として策定され、生産・製造部門が策定する試作コントロールプランのインプットに使用されます。

次に、Mechanical SPICEをどのように活用していけるのかを考えてみたいと思います。

ここでは一例として、機械システムの品質向上、機械システムの設計効率向上等の機械システム開発現場でよく見る課題にについて触れます。

顧客の要求内容が曖昧な状態で設計を開始し、試作とテストを繰り返す、設計根拠が設計者の頭の中にあり、設計書内に残っていないといった状況が開発現場で起こっていないでしょうか。機械システム要件分析、機械システムアーキテクチャ設計といった上流工程の設計活動を実施し、設計成果物のトレーサビリティ、一貫性を確保しながら、設計根拠の正しさを確認することで、試作とテストの繰り返しを削減し、設計の品質向上に繋がっていきます。

また、専用設計による多品種化する設計を行っている、設計者個人が持っている知識・技術・情報に依存した開発をしていないでしょうか。各プロセスで作成される設計成果物を管理、資産化し、次開発でその資産を活用していく仕組みを構築しておくことで設計効率の向上が期待できます。設計成果物の資産化だけでなく、個人持ちの知識や技術をガイドライン、チェックリスト等のプロセス資産に反映することも設計効率向上に貢献します。

本メルマガでMechanical SPICEの位置づけと活用についてご紹介させていただきました。弊社ではMechanical SPICEの適用をご支援させていただく機会が増えており、メカニカルエンジニアリングプロセスにおけるプロセス改善の実績がございます。また、各プロセスの詳細な解説を含むMechanical SPICEのトレーニングを開催しています。次回開催は2022年9月15日に予定しております。ご興味がある方は弊社HPからお申込みいただくかお問合せください。

2022/8/23 安斎 則嗣
Automotive SPICE 3.1 プロセス基礎トレーニング ~メカニカルエンジニアリング~
開催詳細及び、お申込み先:https://biz3.co.jp/publictraining/4541