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現場の改善に繋がるアセスメントを考える

皆様の組織では、アセスメントが目標達成や改善活動にうまく繋げられていますでしょうか?「評定獲得や調達要件の達成のみがアセスメントの目的になってしまっている」、「アセスメントで抽出された弱みに対して表面的な対処しかされず、改善が進んでいかない」、そんな課題を抱えるスポンサーやアセッサーの方のお話をよく耳にします。そのような現場での課題を克服すべく、2020年度に当社社員と同様の課題を抱える他社アセッサーの方々と一緒になり、日本SPICEネットワーク(NSPICE)管轄の研究会活動にテーマアップしました。そしてその同年に、『組織やプロジェクトの目標達成を阻害する問題の本質に気付きを与え、さらに解決へ導くアセスメントをするために、アセッサーとして何ができるだろうか』をテーマに研究会を新設し、今年度まで活動を行ってきてまいりました。今回のメルマガでは、研究会で行った様々な取り組みの中で改善効果が大きかった活動、および参加を通して得られた学びについて皆様にご紹介いたします。

■活動① 弱みに対するリスクと改善案を説明
アセッシーに対してアセスメント結果を報告する際、「各プロセスの評定」や「強み/弱み」に加え、各弱みに対して想定されるリスクや、弱みを解消するための改善提案を行う取り組みを企画し、試行しました。さらに、将来的にアセッシーの方々が主体的に改善を進められるよう、アセッサーが改善に向けた議論に加わり、アセッシー自身が理解できるまで話し合いをする試みも行いました。その結果、アセッシーの方々から「自分たちが正しい方向へ向かって進んでいることを確認することで、改善への更なるモチベーションが得られ、より高い成果を得ることができると確信できた」、「アセスメントは有益であり、プロジェクトメンバー自身のモチベーションも向上してくれた」といったうれしいコメントをいただくことができました。

■活動② 前回との結果を比較表現して成長度を可視化
アセスメントを繰り返しながらプロセスを成熟させていく場合、抽出された弱みがなかなか収束しないために改善の実感が得られず、結果としてプロジェクトメンバーのモチベーションが下がってしまうことがあります。そこで、アセスメント結果を報告する際に、前回のアセスメントとの比較結果をレーダーチャートなどによってビジュアル表現をし、「改善が少しずつ進んでいる」ことを視覚的に訴える試みをしました。この試行では、例えば、前回のアセスメントと比較をして、「全体的にPA2.1(実施管理プロセス属性)の評定が良くなった」、「トレーサビリティに関する弱みが無くなった」など、些細な点でも徐々に成長していることを実感してもらうことが狙いです。結果、アセッシーの方々からは「前回から”改善されている”と実感できると単純に嬉しい」、「評論家ではなく、具体的な中身に沿って解説してもらえた」とのコメントをいただきました。また、試行に協力していただいたアセッサーの方も「アセッシーから改善に対する意欲の向上を感じ取ることができた」と評価されていました。

アセスメントは、単に評定や強み・弱みを提示するだけではなく、アセッサー自身が自分事として現場の課題に向き合い、現場の背中を押すことも期待されていることが分かります。急速な状況の変化に伴い、困難なプロジェクトが増えてきている中でも、会社や組織の事業目標達成に向けて、目標達成を阻害する問題の本質を捉えて、解決に繋げるアセスメントの意義がより重要かつ必要不可欠になってきています。

今回参加いただいた日本SPICEネットワークの研究会メンバーからは、この研究に参加して「自分の考え方が間違っていなかったことに自信が持てた!」、「同じ課題を持つアセッサーとの情報共有の場にもなって有意義だった!」など、アセッサー自身の成長にも寄与できていたようです。こういった同じ課題を持つ仲間同士で将来を想像し、一緒に手を動かし、改善を共有できることこそ、改善の本質だと日々感じています。

2023/3/24 長澤 克仁