メールマガジン

MAIL MAGAZINE

アセスメントに対する意識について

 今回のメールマガジンでは、日本と海外のアセスメントに関する状況の変化や、アセスメントに対する意識の差について考察いたします。

 日本ではAutomotive SPICEの黎明期からアセッサー資格保有者の数が多く、世界第2位を維持してきましたが、昨年3月には中国に抜かれ3位となりました。
この背景には、日本では他国と比較してアセスメントの実施数が少ないことがあります。
アセッサー資格はアセスメントを実施するためのものですので、アセスメント実施のニーズが少なければ、アセッサー資格取得者も大きく増えません。

 アセスメントの実施数が少ない理由の一つは、アセスメントに対する意識の差ではないかと考えています。
本来は、アセスメントはプロセス改善のサイクルの一環として継続的に実施すべきものですが、日本の組織の中には、アセスメント結果=認証取得という誤った意識が強く、瞬間的な努力で達成すれば良いと考える方も少なくありません。
また、アセスメント結果に基づいたプロセス改善活動は、顧客から依頼された余計な活動であり、品質や効率の向上に関係がないと捉えている場合もあります。

 アセスメントは、自社のプロセスの状況を客観的に評価し、改善の方向性や優先順位を決めるための重要なインプットです。
アセスメントの結果は、改善の効果を確認するための指標であり、目的ではありません。アセスメントを改善のサイクルの一環として捉え、継続的に実施することで、品質や効率の向上につながります。

 アセスメントに対する意識を変えていくためには、アセスメントがその後の改善に向けて有益であることをいかに示すことができるかということがもっとも重要です。
Automotive SPICEのPAMに記載された内容を表層的に確認しただけのアセスメント結果では、改善に向けた有益なヒントは得られません。
Automotive SPICEのアセスメントでは、うまくいった開発フェーズや、製品をサンプリングすれば良い結果が出ますし、課題の多いインスタンスをサンプリングすれば悪い結果が出ます。
この結果の良し悪しだけで一喜一憂して終わるということでは何も有益ではありません。
本来、一つ一つのアセスメントには実施目的があり、その目的によっては、あえて課題の多いインスタンスに対して、目的に合わせたプロセスコンテキストを適用することで、本来知りたかった有益なアセスメント結果が得られます。

 このような有益なアセスメントを定着させるためには、組織内にある程度の数のアセッサーが必要となります。
複数のアセッサーが改善目的を共有しながら定期的なアセスメントに取り組み始めた組織においては、アセスメント対象となる方々や上位管理層の意識に顕著な変化が見られます。

 そのためにも、組織の中で孤軍奮闘されているアセッサーの方は、組織内にアセッサーを増やしていくことが必要です。
そして、アセスメントの目的を強く意識してアセスメントを実施しましょう。目的なくBPやGPをなぞっただけのアセスメントをしてはなりません。
最初は効率良くインタビューを行うことができないかもしれませんし、レポートの表現はわかりやすくないかもしれませんが、目的を強く意識したアセスメントの結果は、改善への有益なインプットとなります。

 ここまで、アセッサー数の状況や、アセスメントの意識を変えるための観点について触れてきましたが、冒頭でご紹介しておりましたAXIOMおよび関連サービスを活用いただき、さらに有益なアセスメントを実施していただくポイントについて、少しご紹介していきたいと思います。

 当社では、共同アセスメントを通じて多くアセッサーの皆様にすでにAXIOM(プロトタイプ版)に触れていただいておりますが、プロトタイプ版には含まれていなかった機能も含めて主要なポイントをご紹介いたします。

1.アセスメント計画の立案
 前述の通り、アセスメントの目的やインスタンス選定などを含めた事前の計画が非常に重要です。
 アセスメント計画に必要な情報をAXIOMに入力し、それに基づいてアセスメント関係者との合意形成を行います。
 インタビュースケジュールを含めたアセスメント計画書はAXIOMから文書出力されます。

2.インタビュー戦略の策定
 インタビューを効率的かつ効果的に行う上でのもっとも重要な準備がインタビュー戦略の策定です。
 インタビュー対象プロセス毎に、確認すべき観点、流れを整理し、他プロセスの戦略との関係性も確認しておきます。
 AXIOM上では、全アセッサーが各プロセスのインタビュー戦略をリアルタイムに参照することができます。 

3.インタビュー中の情報収集支援
 AXIOMはクラウドデータベース上で動作しており、全アセッサーがお互いの情報収集状況をリアルタイムに共有できます。
 最新の機能では、アセッサー自身が発した言葉をAIを用いてテキスト化し、意味がもっとも近いBP、GPへ自動的に情報を割り当てます。
 また、テキストの内容に基づいて、強み/弱みを自動判別して属性も自動登録してくれます。
 さらに、AXIOMは日本語、英語の表示を常に切り替えることができるようになっており、一方の言語で入力された情報は、AIを用いて他方の言語に自動翻訳されますので、日本語を母国語としていない方がアセッサーに加わっている場合でもスムーズな意思疎通が可能です。(ご要望に応じて、任意の翻訳エンジンと置き換えることも可能です。)

4.コンソリデーション時の支援
 インタビュー中にアセッサーが収集した情報を変換する形で所見と評定を確定していきます。
 また、AXOMには、Automotive SPICEガイドラインのすべてのルール、推奨事項がプリセットされており、コンソリデーション時に個々の該当状況を確認しながら、抜け漏れのない情報の精査が可能となります。
 さらに、評定間の依存関係を持つ指標については、自動チェック機能によって矛盾点を洗い出してくれます。

5.報告書レビュー
 コンソリデーションにおいて確定させた個々の所見、および所見間における矛盾、表現の分かりやすさをAIを用いて自動チェックしてくれます。
 また、AIは弱みに対する改善案を提示し、アセッサーへ助言を行ってくれます。

 上記内容の詳細は2月21日に開催予定のオートモーティブソフトウェアフロンティアにて講演を予定しておりますので、ぜひご聴講いただければ幸いです。

 なお、すでにアナウンスさせていただいておりました通り、2024年の中頃からはintacsのアセッサーライセンス制度が大きく変わります。
具体的には、プロビジョナルアセッサートレーニング受講のための条件として、事前にプロセスエキスパートトレーニングの受講と試験合格が必要となります。
現行制度にてアセッサー資格を取得し、すぐにアセスメント活動の開始を希望される方は、ぜひ2月、3月に計画中のトレーニングへのご参加をご検討ください。

[intacs認定プロビジョナルアセッサートレーニング 開催予定]
・2024年2月5日~9日
・2024年3月11日~15日
お申込み先:https://biz3.co.jp/publictraining/33

2024/1/24 田渕 一成