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BI活用によるプロセス改善の支援

去る2月20日から2月22日にかけて開催されたオートモーティブソフトウェアフロンティア2024にて、弊社からも「AI/BI活用によるAutomotive SPICEのアセスメントとプロセス改善の新しい形」と題して講演させていただきました。今回のメルマガでは、講演中に取り上げたBIによるプロセス改善の支援に関する内容についてご紹介したいと思います。

BI活用の紹介の前に、プロセス改善が上手くいくために必要な要素を考えてみたいと思います。考えられる要素は多岐にわたりますが、ここでは特に重要な下記の3つの要素を取り上げることにします。
・プロセスの弱みの根本原因が分析され、解決されている
・プロセス改善が段階的に行われ、現在の状況が把握されている
・プロセス改善の効果が実感されている

また、プロセス改善を行う際に気を付けるべき点として、プロセス改善における70:20:10の法則をご紹介します。70:20:10の法則という考え方は、もともとはロミンガーの法則と呼ばれる、企業での人材育成に関する観察結果に由来しています。ロミンガーの法則によると、企業において人材が成長するために必要な事柄として「仕事上の直接経験」が7割、「他者からのアドバイスや観察」が2割、「書籍や研修からの学び」が1割を占めるとされています。では、プロセスが改善されるために必要な事柄は何かと考えると、弊社での多くのお客様への支援を通じて得られた経験からは「プロセス改善への意識付け」が7割、「仕組みを使いこなすためのメンバーのスキル」が2割、「プロセス、ツール、手法などの仕組みの整備」が1割となります。ともするとプロセス改善では仕組みの整備にばかり目が行きがちなため、意識面の重要性の高さを意外に感じられた方も多いのではないでしょうか。

それではここから、本題のBI活用に入っていきたいと思いますが、その前にBIとは何かということを簡単にご紹介します。BIとはビジネスインテリジェンスの略称で、データを取り込み、レポート、ダッシュボード、チャートなどの直感的なビューにより可視化するソフトウェアおよび技術の総称です。では、BIを活用することによって、先に挙げたプロセス改善が上手くいくための要素がどのように支援されるのかを見ていきたいと思います。

弱みの根本原因の分析

アセスメント結果に基づくプロセス改善のよくない、しかしよく見られる例として、アセスメントで検出された弱みに対し、テンプレートの局所的な改善や、チェックリストに弱みとして指摘された箇所への確認項目を追加するだけのような場当たり的な対応があります。一方、弱みに対して、それを生み出した根本原因を分析し、根本原因を解決するための対策を行うのがよい改善の例になります。

図1はあるプロジェクトのアセスメント結果の中で検出された弱みに対する根本原因分析の結果になります。分析結果から、このプロジェクトでは「プロセスが定義されていることを知らなかった」ことが最も多くの弱みを生み出していた原因であることがわかります。そのため、このプロジェクトではプロセス教育を実施することが最も高い改善効果が期待できます。このように根本原因を分析することで、改善効果の高い活動から優先的に実施することが可能となります。また、先の70:20:10の法則で重要と述べた、仕組み整備以外の面にも目を向けられるようになります。

図 1:弱みに対する根本原因分析結果

プロセス改善状況の把握

残念ながらアセスメントの目的はAutomotive SPICEのレベル認証取得であるという誤った認識が依然として多く見られます。そもそもAutomotive SPICEにはISOのような認証という概念はなく、ある時点でのプロセス能力を確認することが目的となります。そのため、定期的にアセスメントを実施し、プロセス改善が進んでいるか、またはプロセス能力が適切に維持されているかを確認することが重要です。

図2はプロセス改善結果の推移を2回のアセスメントで検出された強みと弱みをプロセス毎に比較することで可視化しています。この結果から、弱みの比率が減少しプロセス改善が順調に進んでいることが確認できます。このように、プロセス改善が進んでいることを確認することでプロセス改善へのモチベーションを維持することができます。

図 2:プロセス改善結果の推移

プロセス改善効果の見える化

アセスメント結果を分析しようとすると、つい弱みの分析ばかりに目が行きがちですが、強みについても分析することが重要です。図3はアセスメントで検出された強みがどのように生み出されたかを分析した結果になります。濃いオレンジが「プロセス改善前から実施していた」活動に起因する強みで、プロセス改善前から存在していた社内規定などに従い実施されていた活動などが該当します。薄いオレンジが「プロセス改善前から実施していたが、十分ではなかった」活動に起因する強みで、社内規定などに基づき何らかの活動は行われていたが、Automotive SPICEの要求事項に対しては不足があるような活動になります。灰色は「プロセス改善前は実施していなかった」活動に起因する強みで、プロセス改善活動後に初めて実施するようになった活動が該当します。そのため、薄いオレンジと灰色の部分は、プロセス改善によって新たに生み出された強みと言えます。このように強みを分析することでプロセス改善の効果を確認することが出来ます。

図 3:強みの発生要因の分析

目標プロセス能力レベル達成後のプロセス改善効果の見える化

プロセス改善の本来の目的は、製品品質や開発効率の改善ですが、目標のプロセス能力レベルを達成してもそれらの改善効果を定量的に把握するのが難しいという声を多くのお客様から耳にします。この課題については、アセスメント結果に加えてJIRAやRedmineなどのプロジェクト管理ツールに蓄積されているデータもBIにより可視化することで、プロセス改善による効果をより具体的に把握できるようになります。そのような改善に利用可能なデータの例としては下記のようなメトリクスが挙げられます。
・プロセス毎の工数(プロセス実施効率)
・問題登録から解決までの期間(問題解決所要時間)
・変更依頼の分析時に見逃した対象成果物数(影響範囲分析網羅率)

本メルマガではBI活用によるプロセス改善支援についてご紹介しました。弊社では4月12日(金)に「AI/BI活用によるAutomotive SPICEのアセスメントとプロセス改善の新しい形」と題した無償セミナーを開催予定です。ご興味を持たれた方はこちらからお申し込みをお願いいたします。

2024/3/21 蛸島 昭之