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サイバーセキュリティ保証レベル(CAL)の積極活用

 今回のメルマガでは、自動車サイバーセキュリティ規格ISO/SAE 21434に示される「サイバーセキュリティ保証レベル(CAL)」の活用についてお話しします。CALは機能安全におけるASILに相当し、サイバーセキュリティリスクの程度に応じて開発手法の厳密さをコントロールする仕組みです。CALにはサイバーセキュリティ対応のコストを抑える可能性がありながら、業界内では現在のところあまり広く活用されていないようです。これはもったいない状況ですので、今回メルマガのテーマとして取り上げました。

 サイバーセキュリティ関連製品の開発では、様々な追加活動が求められます。例えば、以下のような活動です。
 ・弱点分析、TARA
 ・厳密なレビュー、検証
 ・追加テスト(ファジング、ペネトレーションテスト)
 ・サイバーセキュリティアセスメント
 これらは製品のセキュリティ確保に寄与しますが、開発負荷の増大も招きます。限られたリソースの中で確実かつ効率的にセキュリティを確保するには、戦略的なアプローチが必要です。

 確実かつ効率的なセキュリティ確保の鍵は、「選択と集中」です。つまり、リスク分析を通じて重要な箇所を特定し、そこにリソースを重点的に投入する考え方です。この考え方は機能安全の規格ISO 26262においてもHARA(ハザード分析及びリスクアセスメント)とASILという仕組みに色濃く反映されており、その仕組みはISO/SAE 21434にもTARA(脅威分析及びリスクアセスメント)とCALとして引き継がれています。これらの仕組みを組み合わせて活用することで、サイバーセキュリティ活動を効率的に実施できます。

 とは言え、ISO/SAE 21434におけるCALの定義はAnnex扱いであり、詳細な要求は定義されていません。そのためプロセス整備の際に軽視されたり、後回しにされたりしがちです。この背景には、流動的なサイバーセキュリティ関連の情勢や、国や組織によるサイバーセキュリティリスクの捉え方の違いがあり、規格内に絶対的な基準を示しづらいという状況があったようです。しかし、CALの活用には以下のようなメリットがあります。
・開発負荷を抑えつつ、セキュリティを高めることができる
・サイバーセキュリティ活動の選択に根拠を与え、顧客との調整や合意の土台となる

 CALを活用するにはまず組織標準としてCALの判断基準(表1)とCAL毎のサイバーセキュリティ活動の厳密さ(表2)を定め、次に各製品開発プロジェクトが組織標準に従ってサイバーセキュリティ活動の選択を行います。

 他にもCALによる活動選択はレビューの厳格さや独立性など多くの面に適用できます。CALの効果をさらに多く引き出すには、サイバーセキュリティの観点で開発対象を領域分割し、領域毎にCALを設定/低減する戦略が有効です。ただし、これには機能安全におけるASILの分割とは異なる原理に基づいた考え方が必要となります。サイバーセキュリティにおけるパーティショニングやCALの低減といった詳細なテーマについては、今後無償セミナーやワークショップ等でも取り上げる予定です。ぜひ、今後の情報発信にもご注目ください。

2025/3/19 大野 貴正