製品開発における品質改善を推進するうえで、第三者アセスメントと社内アセスメントをバランスよく組み合わせることは非常に大切です。これまで多くの企業で第三者の立場からプロセス改善のアセスメントを担ってきました。第三者アセスメントの利点として、社内では気づきにくい弱点や改善の余地を客観的に洗い出せる点があります。一方、社内メンバーが実施するアセスメントは、プロジェクトの状況や組織の文脈を踏まえた評価を素早く・柔軟に行えるという大きな利点があります。開発の節目やトラブルが発生した際に即座に状況を把握し、迅速に改善策を講じられる点は、まさに「現場を熟知している」社内アセスメントならではの強みです。
さらに、社内アセスメントを続けることで、社内メンバーが日常的にプロセスの目的や品質意識を考えるようになるという波及効果も期待できます。第三者と社内、それぞれの強みを活かし、両輪で改善活動を回すことで、組織全体の品質文化はより強固に育まれていくと考えます。
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アセスメントを行うためには、プロセスアセスメントモデル(PAM)に関する深い理解、インタビュースキル、評価結果を合理的に整理・統合するコンソリデーションスキルなど、多岐にわたる知識・能力が求められます。特にAutomotive SPICEのような規格の理解や評価基準の適切な判断・対応ができるようになるためには、それ相応の知識や経験の積み重ねが必要であり、一朝一夕には習得できません。これから取り組もうとする企業やチームにとって、このハードルは決して低くありません。こうしたハードルを下げるために有効なのがAXIOMというツールです。
AXIOMは、アセスメントにおいてアセッサーが考慮すべきポイントや効率的な情報収集に対応し、アセッサーのパートナーとなる次世代型アセスメントツールです。たとえば、経験の浅いアセッサーがAXIOMを活用することで、実務をこなしながら学び、さらにスキルを磨く「走りながら学ぶ」スタイルを実現できます。これは、ツールが知識や経験の不足を補ってくれるため、自信を持ってアセスメントを進めることができます。今回は、AXIOMを活用する中で感じたツールの有効性について、体験談を交えながらご紹介いたします。
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アセスメントの現場ではAutomotive SPICEのPAM(プロセスアセスメントモデル)の知識不足や、アセスメントのインタビューで得られた観察結果(=所見)の取りこぼし・矛盾など、大小さまざまな課題に直面します。また、膨大な所見に対するレビュー作業や、指摘を受けることへの心理的負担によって、アセスメントを煩わしく感じる方も見受けられます。こうした難しさを抱えるたびに、「もっと効率的で確実な方法があれば」と感じることがあります。
こうした難しさを解決するためにAXIOMではAutomotive SPICEガイドラインや過去のアセスメント事例を学習させた生成AI機能が搭載されており、次のようなメリットをもたらしてくれます。
1. 所見の質と一貫性の向上
- 所見情報が十分でない箇所を自動で指摘し、抜け漏れを防止できる
- 評定根拠と結論の整合性をチェックするため、矛盾した評定を防止できる
2. 矛盾の自動検出
- 複数プロセス間、同一プロセス内での所見の食い違いを検出できる
3. レビュー時間の大幅短縮
- 従来1~2日かかるレビュー作業が、ツール上で数分〜1時間ほどで一通り完了することができる
- アセッサーは指摘されたポイントに集中するだけでよく、作業効率が格段に向上する
4. アセッサーの心理的負担を軽減
- ツールが24時間いつでもフィードバックを返してくれるので、提出前に何度でも確認可能となる
- 経験の浅いアセッサーでも、AIのサポートを得て所見をより正確に仕上げられる
このように、AXIOMを活用することで、専門知識や経験が不足している場合でもアセスメントを進めやすくなり、品質と効率を両立することができると実感しています。
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AXIOMの生成AI機能を活用するなかで、最も大きなメリットだと感じたのは所見間の矛盾検出が非常にスピーディに行える点でした。アセスメントに参加した経験の浅いアセッサーが、あるプロセスの所見で「工数は十分だ」と記載しているのに対し、別のプロセスで「工数が不足して開発が停滞している」と記載してしまい、明らかな不整合を引き起こしました。これを数百件ある所見の中から、人の目で見つけ出すには相応の集中力と時間が必要です。しかし、AXIOM上でチェックを実行すれば、わずか数分で矛盾を自動的に洗い出し、矛盾箇所を具体的に提示してくれました。
結果として、アセスメントの品質と信頼性が高まり、さらにレビュー作業に要する時間も大幅に短縮できるという好循環が生まれました。
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冒頭でも触れたように、第三者視点による客観的なアセスメントは重要ですが、社内でアセスメントを実施しながら継続的に改善サイクルを回す仕組みこそが、品質を根幹から強化すると私は考えています。とはいえ、豊富な知識を持つアセッサーを育成するのは簡単ではありません。AXIOMのようなツールを利用することで、一定レベルのアセスメントを実施できるため、経験の浅いアセッサーでも安心して取り組めます。
そうしてアセスメントを通じて経験を重ね、AXIOMのフィードバックをもとに学習し、スキルを高めていくことで、組織内にアセスメントのノウハウが徐々に蓄積します。社内アセスメントを担当する人員が増えれば、レビューのタイミングやアプローチも柔軟に調整しやすくなります。最終的には第三者アセスメントを必要最小限に抑え、社内アセスメントを実施できる体制へと移行できます。
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AXIOMは日々進化しており、生成AI機能の精度やユーザビリティ向上の検討を進めています。弊社は第三者アセスメントを続ける一方で、皆様が社内アセスメントを実施できる体制を構築できるよう、AXIOMを活用した共同アセスメントを行っております。ご興味が御座いましたらお気軽にお問合せください。
引き続き、本メールマガジンにて生成AIを活用した具体的な事例を紹介してまいりますので、ぜひご覧いただき、日々の業務などに役立つヒントなどお持ち帰りいただければ幸いです。
2025/4/17 中武 俊典