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ISO 26262で求められている表記法の適用の観点

ISO 26262ではセーフティライフサイクルを通じた安全活動の中で、設計や要求仕様を表記する際に適切な状況で適切な表記法を使用することが求められています。今回は、ISO 26262で求められている表記法の適用の観点についてご紹介します

ISO 26262で求められている表記法を使用する上では、“構文形式”、“セマンティック”の二つの観点が重要となります。一つ目の“構文形式”とは、文章、図、表などの書式や構成に関する制約についての形式です。二つ目の“セマンティック”は、表記に用いる文章、図、表などの意味の解釈の形式です。

それでは、ISO 26262で推奨されている四つの表記法である「自然言語表記」、「非形式表記」、「準形式表記」、「形式表記」について、“構文形式”、“セマンティック”を含めて、表記法の適用の観点をご紹介します。まず、「自然言語表記」は、人間が通常の意思疎通に使用している言語を用いた表記法です。この表記法は、柔軟な表現が可能な反面、表現の曖昧さや読み手の誤解釈を生むことがあり、自然言語表記を使用する際の構文形式やセマンティックに関する制約をガイドライン、チェックリストに定義することなどの工夫が求められます。次に「非形式表記」は自由な図や表を用いた表記法です。非形式表記は、表記法のそのものに表記の制約がない、つまり図や表を自由に描くことのできる表記法です。
この表記法は、タイミング図やフローチャートなど、「自然言語表記」だけでは表現しにくい内容について、書き手の意図を直感的なイメージで読み手に伝えることが出来ます。しかし、「自然言語表記」と同様に、自由な表現が可能な反面、表現の曖昧さを生みやすいため、表記に関する制約をガイドライン、チェックリストなどに設けることが同じく必要となります。
三つ目の「準形式表記」は、表記法のそのものに構文形式の制約を持つ図や表を用いた表記法です。この「準形式表記」は、コンポーネントの振る舞いや状態遷移といった設計に用いられます。「準形式表記」では表記法のそのものに制約があるため、書き手による図や表を表現の曖昧さを抑えることができます。しかし、「準形式表記」は、表記法そのものにセマンティックに関する制約がないため、読み手による誤解釈を生みやすく、セマンティックに関する制約をガイドライン、チェックリストなどに設けることが必要となります。この「準形式表記」は、UMLやSDLなどが例として挙げられます。
最後の「形式表記」は、表記法そのものに制約を持つ厳格な表記法です。これは数学的手法を用いて表記された一意な解釈が保証されます。ただし、「形式表記」は、その表記法の習得が容易ではないものもあり、それが導入の難しさを生む場合もあります。

これらの表記法は、それぞれに特徴を持っており、いずれかの表記法のみをすべてに適用するというよりも、それぞれの表記法の特徴を最大限に活かした適用が望ましい姿と言えるでしょう。また、いずれの表記法を用いる場合においても、その解釈に誤りが混入しにくい仕組みを構築することが重要です。そのため、先に述べた“構文形式”、“セマンティック”それぞれの観点から、表記法を見直してみてはいかがでしょうか。

(2012年09月号メルマガ抜粋)

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