ホワイトペーパー

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コンピテンス管理とコンピテンシー管理

今回は、「人」の能力を扱うコンピテンス管理と、「人」の個人の特性を扱うコンピテンシー管理についてご紹介します。どのような設備やツールを利用したとしても、製品を開発するのは「人」であり、それぞれの活動に携わる「人」が十分な知識と経験、技術などの能力を持たずして、対象製品の安全性を保証することはできません。また、「人」が作業をした時、作業結果の品質は、能力だけではなく個人の特性(動機・使命感・価値観・信念など)による影響を受けます。このことを踏まえ、コンピテンス管理とコンピテンシー管理の2つの視点で話を進めていきます。

まず、コンピテンス管理ですが、コンピテンスはISO 9001では「力量」や「能力」と訳されます。ISO 26262ではコンピテンス管理について、「組織は、安全ライフサイクルの実施に関係する人に、責任に相当する十分な技術レベル、能力および資格があることを保証しなければならない。」と要求しています。また、規格では、この能力と資格を評価する時、開発の経験が考慮できるといっています。
開発プロジェクトでは、設計、テスト、管理などの様々な活動が担当者に割り当てられます。それぞれの活動を実行するために必要となる専門的知識、経験、スキルを定義し、それらを満たす人材をプロジェクトに対して適切に割り当てる仕組みを、組織が保証する必要があります。

次にコンピテンシー管理ですが、コンピテンシーは、1970年代に米国の心理学者であるD・C・マクレランド(当時:米ハーバード大学行動心理学教授)によって提唱され、企業の人材採用では「特定の職務において業績を上げ続けている人に固有な行動特性」という定義が定着しています。
コンピテンシーには拡張された様々な定義がありますが、行動特性に限定せず、「コンピテンシーとは、職務や役割における効果的ないしは優れた行動に結果的に結びつく個人の特性(動機・使命感・価値観・信念など)」という定義で話を進めます。
ISO 26262では、コンピテンシー管理を直接的には要求していません。しかし、各個人が効果的な仕事を実施できるように、個人の特性に合った職務を割り当てることは、組織として、チームとして重要な活動と考えます。

作業を実施するにあたり、コンピテンスが保証されていても、コンピテンシーが合っていなければ作業に要求される結果は得られません。たとえば、設計担当者について考えます。設計に必要な知識、経験やスキルがあっても、モチベーションが低い人の設計結果をご想像ください。また、設計に必要な知識と経験がないが、設計者に必要なモチベーションが備わっていたとしても、要求される設計結果を生み出すことはできません。

ISO 26262への対応を進める上で、コンピテンス管理と併せてコンピテンシー管理を行うことは、安全への取り組みとして必要な活動といえます。コンピテンス管理で職務を遂行するのに必要な能力を見極め、コンピテンシー管理で職務内容と個人の特性との相性を考慮した上で、人材を職務に割り当てることは、作業結果の品質を上げることにつながり、安全性を保証する上で重要な項目の1つとなります。また、コンピテンシー管理は、組織の安全文化を構築するための重要なアプローチの1つです。(2012年05月号メルマガ抜粋)

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