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2018年08月号 製品開発において重要なシステム領域の開発に重点をおいたトレーニングを開催いたします(安斎)

最近、弊社にご依頼のあるお客様から、『システム設計ができる人材を育成したい』、『システム設計が実施できる体制を構築したい』との声をよく聞くようになりました。
背景には、開発する製品の高機能化、複雑化、及び完成車メーカーからのAutomotive SPICEへの準拠、機能安全対応の要求が強く関係していると考えます。

自動車の開発の歴史を考えてみた時、最初は自動車の機能部品(基本機能を司る部品、ユニット)の組み合わせで作られていたものが、車の電子化が進み、その流れは年々大規模化、複雑化し、特に電子システムに搭載されるソフトウェアの開発規模、体制が一変しました。
その結果、ソフトウェアの品質が自動車の品質に大きな影響を与えるようになり、ソフトウェア開発における品質向上が各社共通の課題となっていきました。
こういった変化に対して、欧州の自動車メーカーが中心となって共通のプロセスモデルを策定しようとする動きが高まり、Automotive SPICEが策定されていった背景があります。

ここで、これまでのAutomotive SPICEのシステム開発プロセスに着目すると、システム開発プロセスは、当初から全てのドメインの上位概念としてシステムエンジニアリング領域が定義されており、ISO/IEC 15288との関連性を持っていましたが、実質的にソフトウェアだけを対象とした上位概念として扱われることが多くありました。
(※ ISO/IEC 15288は、システムライフサイクルプロセスが定義された標準規格の一つで、Automotive SPICEの範囲を超えるようなプロセスが必要な場合に、ISO/IEC 15288のような他のプロセス参照モデルから適切なプロセスを追加して使用されている。)

製品という視点で実際の車載システムを見た場合には、電気・電子、機構といったソフトウェア以外のドメインがあります。また、車載システムに求められる機能安全規格「ISO 26262」では、最初からソフトウェア以外のドメインを含めたシステム全体での安全性が求められています。
このような流れの中で、Automotive SPICE3.0以降、システムエンジニアリングをソフトウェアエンジニアリング、機構 系ハードウェアエンジニアリング、電気・電子系ハードウェアエンジニアリングを含む各ドメインエンジニアリングの上位に位置付け、それに対して各ドメインエンジニアリングをプラグイン可能な構造とすることで、車載システム開発の全てに適用できる拡張性を備えた形に変更されました。

また、それによって、システム開発は、これまでのドメイン(ソフトウェア領域)ごとの『部分最適』から製品全体としての『全体最適』に向けた活用も可能になってくると考えられます。
製品開発においてシステム開発の領域は、単に要求された製品を作るということだけではなく、会社として、又はプロジェクトとして限られた資源(人的リソース、技術資産、開発コスト、開発期間、等々)の中でどのように製品開発を実現していくのかを(全体最適として)考える重要なプロセスになってきます。

弊社では9月から「システム設計ができる人材育成」、及び「システム設計を実施できる体制構築」のための足掛かりとなるトレーニングとして、『Automotive SPICE 3.1プロセス基礎トレーニング~システムエンジニアリング編~』を開催していきます。このトレーニングの中では、前述したAutomotive SPICE 3.0以降の「プラグインコンセプト」をはじめとするキーコンセプトの内容、及びシステムエンジニアリング系プロセスに関するPAMの内容を詳しく解説いたします。
また、今後、プロセス基礎のみではなく、システムエンジニアリングの実践編としてシステムエンジニアリングの具体的な手法論を含めた実践編のトレーニングを企画しております。準備が整い次第、詳細をメルマガ、及び弊社Webページでご案内いたします。

2018/8/20 安斎 則嗣