プロセスマイニング

最終更新日: 2025.06.24

1. はじめに

弊社では、開発プロジェクトに関わる課題のご相談をよく受けます。その課題は開発プロジェクトに関わる利害関係者の立場によってさまざまです。開発プロジェクトに関わる利害関係者が抱える典型的な3つの課題は以下です。

  • プロジェクトマネージャーの立場での課題
    • 「見積り工数がいつも外れる」
  • 品質保証マネージャーの立場での課題
    • 「不具合につながる開発行為やプロセスを予知できない」
  • プロセス改善推進者の立場での課題
    • 「プロセスを適用すると開発担当者がうれしさを感じず、展開したプロセスが形骸化する」

これらの課題は一体どのようにして解決すればよいのでしょうか?
対象プロジェクトごとに適した指標を設定し、開発活動から得られるさまざまなデータを収集してそのデータを分析、そして改善活動を実施して効果を確認するサイクルを回すことです。従来のやり方でこのサイクルを回してうまくいかなかった場合、代替手段の一つとして「プロセスマイニング」が考えられます。

2. プロセスマイニングとは

プロセスマイニングとは、規格やプロセスモデルありきで考える従来のプロセス改善とは異なり、現状の活動から得られるイベントデータを分析し、プロセスの再構成によって見える化するアプローチです。すなわち、大量の時系列データを分析する手法(統計学、機械学習など)とプロセスをモデル化する手法(ビジネスプロセスマネージメント:BPM、ペトリネット、確率論、最適化など)を統合した手法がプロセスマイニングです。この手法を実現しているさまざまなプロセスマイニングツールが市場に提供されています。

業務プロセスそのものが定義されていなかったとしても、イベントデータさえあればプロセスマイニングを活用できます。プロセスマイニングを実施すれば業務プロセスに関わる問題が浮き彫りになります。具体的には、付加価値を生まない活動、非効率な活動、ボトルネックの活動などを特定することができます。

上図は、イベントデータを一覧化した表になります。イベントデータは、プロジェクトを識別するプロジェクトID、プロジェクトの中で実施されたプロセスまたはアクティビティ名をタスク、そしてタスクが実施された日時を含みます。これらのデータ属性から、プロセスマイニングのアルゴリズムを通して、プロジェクトID別に、タイムスタンプを元に、フローが構築されます。
例えば、紫色で示したPrj_1のタスクフローは、A、B、C、D、Eと各1回ずつ実施されています。タイムスタンプに基づいて、AからEの順番で実施されたと解釈されます。同様に、緑色で示したPrj_3のタスクフローを見てみましょう。タスクは、A、B、C、D、D、EとDが2回、それ以外は1回実施されています。
次に、これらのフローがプロセスモデルとして統合されます。プロセスマイニングでは、Aの次にBが実施された回数が2回であることも保持しています。同様に、Dの後にEが実施された回数が3回であることも保持されています。
仮に、理想的なプロセス実施が、A→B→C→D→Eの順番だとすると、見える化された状態で、AからC、BからD、CからB、DからDの実施が理想から外れた流れであることが一目で分かります。このプロセスモデルを眺めたり、ダッシュボードのような分析用のビューを用いて視点を変えてみることで、問題点や気になる点が見えてきます。

3. 最新動向

プロセスマイニングツールのトレンド、自動車業界での活用実績など、最新の情報を提供いたします。

4. プロセスマイニングの価値と活用例

4-1. プロセスマイニングの価値

利害関係者にとって共通のプラットフォーム

プロジェクト単位で、組織の標準プロセスまたはプロジェクト固有のプロセスでプロジェクトを実施している場合、プロジェクト管理、タスク管理、成果物管理などのツールを使用して、活動や成果物管理のログデータを生成します。これらのデータが、プロセスマイニングに取り込まれて、見える化され、分析活動を進めます。
プロジェクトリーダーは、ビューを活用して、プロジェクトの状態だけでなく、傾向もプロジェクト中に分析し、リスクを管理することに役立てられます。
また、品質保証の視点では、プロセスの実施状況を把握できるため、プロセス監査の一部を実施していることになります。複数のプロジェクトが並行して実施されている場合の監査活動の自動化に活用できます。
そして、プロジェクトが終了時に、EPG/SEPGメンバーは、定量的な視点で、プロジェクトデータから標準プロセスの良し悪しを評価することができます。この評価結果に基づいて、改善を進めます。

部門長や上位管理者にとっても活用できます。プロジェクトに関連する業績、人員に関するデータ(工数など)を社内インフラで情報を収集していれば、そこからのデータをプロセスマイニングに与えることで、事業目標や部門目標達成への見込み、状況を把握することが可能になります。

これらの活用をまとめると、プロセスマイニングは、それぞれの立場が必要とする分析を可能にする共通のインフラ、つまりプラットフォームとして位置付けることができます。組織の成熟に合わせて、プロセスマイニングの活用範囲を拡大できるスケーラブルなプラットフォームである点も特徴的です。

今までの改善方法に+α

4-2. プロセスマイニングの活用例

例1:プロセス監査に活用(品質保証活動を支援)

例2:プロジェクト状態の可視化に活用(管理者層の管理活動を支援)

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