弊社の7月のメルマガ(VDA Automotive SYS ConferenceにおけるAutomotive SPICEの最新動向)で、Automotive SPICE V3.1に対応したプラグインモデルとして、機械システム開発向けのPAM(SPICE for Mechanical Engineering)が公開されたことをご紹介させていただきました。
今回のメルマガでは、「製品開発プロセスのあり方」について考えてみたいと思います。
昨今、自動車の電子化、電動化が進み、運転支援システム、自動運転システム等が搭載された車両の開発も盛んに行われるようになってきております。また、自動車産業は100年に1度の変革期と呼ばれ、その象徴となっているのはCASEであるとも言われています。
こうした流れがある中で、車両の構造的な大きな変化の一つは、これまで機械的な機構のみで担っていた部位を電気電子的機能に代替させたことによる変化が起きています。
これにより、これらの部品を動かすためには、機械的な仕組みだけではなく、それを制御する電気電子、及びソフトウェアが相互に絡んで動作する構造に変化しました。
このような変化に応じて、製品開発を行っていくと、以下のような問題が発生していくと考えられます。
例えば、前述したような製品構造を持った製品の開発では、機械システム、電気電子、ソフトウェアの単体では動いていたが、全体を統合すると想定していた動作が得られない、性能が出ないなどです。こうした問題は、設計の後工程での戻り作業を発生させ、品質、日程、コストに多大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。このような問題は、今まで機械的な仕組みで動かしていた機能をソフトウェアなどで動かす仕組みに変更した際に、統合といった観点でのプロセスが構築されず、お互いの責任が曖昧なまま開発が行われた際に起こりやすいです。
よって、このような問題の発生を防ぐためには、設計の上位概念であるシステム領域の設計が重要となってくるのと同時に、それぞれの領域の設計者が適切なタイミングで連携を取る必要があります。また、適切なタイミングでの連携を取るためには、設計の上位概念であるシステム領域、及び各ドメインのプロセスが、体系化され一貫性のある開発プロセスを構築していく必要があると考えます。
ポイントは、システム領域のプロセスの中で、各ドメインがすり合わせを行い、意思決定していくプロセスを準備して、システム-ドメイン間の入出力、およびそれぞれのドメイン間の入出力を定義することが重要となります。
こうすることにより、システム領域での設計結果が、整合が取れた形で各ドメインに落とし込みできるようになってきます。
これまでの製品開発プロセス(今回は設計領域)も、各社独自の機械システム開発プロセスを他の領域のプロセスと組み合わせて構築されていると思いますが、現状の製品構造の変化に応じて、いま一度、体系化及び一貫性のある“製品開発プロセス(設計領域)のあり方”について見直してみてはいかがでしょうか。
すでに広く知られているAutomotive SPICEは、車載システムを開発するために必要な活動の目的や成果が体系的にまとめられています。今回、Automotive SPICE V3.1に対応したプラグインモデル “SPICE for Mechanical Engineering” が公開されたことで、そのカバーする領域が機械システム開発まで拡張できるようになりました。
これを活用し、製品開発プロセスを見直してみることで、更なる開発の効率化、コスト低減、新たな付加価値の創造、最終的には収益の確保、改善といった企業として実現すべき課題の実現に一歩近づけると考えます。
弊社では、今年の年末に向けて今回公開された“SPICE for Mechanical Engineering“の日本語訳を作成し、intacsから発行される予定です。
また、機械システム開発における困りごとの解決、機械システム開発プロセスのプロセス構築、改善、等々のご支援もしておりますので、お気軽にご相談ください。
2019/09/20 安斎 則嗣