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VDA Automotive Sys Conferenceにおける最新動向

過日5月10日から12日の3日間で、第10回VDA Automotive SYS Conferenceが開催されました。今回のカンファレンスはコロナ禍の状況を受け、本イベントとしては初のオンライン形式での開催となりました。カンファレンスではセーフティ、セキュリティ、自動運転やAIなどのテーマが多く扱われていましたが、業界の関心の高まりはそれらの要素をどう評価していくかという点にも感じられました。この点に関して、様々なノウハウに加えて規格やガイドライン整備の面での最新情報がシェアされましたのでここでご紹介いたします。

まずは、Automotive SPICE for Cybersecurity(以降、Automotive SPICE for CS)に関する動向をご紹介いたします。Automotive SPICE for CSは、プロジェクトにおいてサイバーセキュリティリスク管理とセキュア設計を適切に実施するために役立つプロセスモデルですが、その内容を正しく理解して最大限ご活用いただくにはやはりセミナーやトレーニングを通じて知識を得ていただくのが近道と言えます。今回のカンファレンスではVDAより、Automotive SPICE for CS向けトレーニングの提供が2021年後半に開始されると報告されました。本トレーニングは従来のAutomotive SPICE向けトレーニングとは別に用意される3日間のトレーニングです。ただし、このトレーニングはまずドイツ国内でトライアル実施されるため、日本でトレーニングを受けられるのは2022年以降となる見通しです。弊社では本トレーニングを、運用開始と共に日本で提供できるよう準備を進めてまいります。最新情報はまたメルマガやウェブページよりお伝えいたします。
また、Automotive SPICE for CSの精査と並行してAutomotive SPICE ガイドライン(通称Blue-gold book)の改訂も進められており、Automotive SPICE for CSの要素を組み込んだガイドラインが2021年第3四半期にリリース予定となっています。Automotive SPICE for CSのアセスメントを実施する場合は、通常のアセスメント+2日の日数が想定されています。

続いては国連下部組織のWP.29が公開したサイバーセキュリティレギュレーションUN-R155に関連する話題で、UN-R155が要求するCSMSへの適合を監査するための質問事項と評定基準を示すガイドライン「Automotive Cybersecurity Management System Audit」(以降、ACSMS Audit)がVDAより紹介されました。このガイドラインは2020年11月に正式公開されています。UN-R155はOEMを対象としたレギュレーションであるため、本ガイドラインは行政機関がOEMを監査する際に利用することを主眼に作成されています。一方で、サプライチェーンに対するCSMSの要求および評価の方法には複数の選択肢が存在する状況です。関係企業間で会社レベルの契約を締結したり、自動車業界向け情報セキュリティ基準のTISAXを活用したりするほか、欧州のOEMにおいてはAutomotive SPICE for CSを用いて要求/評価を行う動きもあるようです。

Automotive SPICE 4.0に関しては、従来のプラグイン領域間の重複を整理して統合エンジニアリングフレームワークとして生まれ変わるべく改訂が進められています。この改訂では、AIや継続的デベロップメントといった最先端の手法の取り込みも視野に入れており、リリースは2022年末頃と説明されています。

その他の話題として、カンファレンス前日には参加型のワークショップが実施され、用意されたセッションの半数がAutomotive SPICEに関するものとなっていました。これらのワークショップを通じては、以下のようなAutomotive SPICEアセスメントのトレンドが強く感じられました。

・Blue-gold bookの適用は当たり前になってきている
・それに伴いアセスメントの日数はより増える傾向にある
・一方で評定のバラつきや不正確なアセスメントは依然として多い

弊社ではこうした現場の状況に対して新たな手法や解決策を模索しており、より効率的かつ正確なアセスメントを実施するためのトレーニングやツールの提供を近日中にアナウンスいたしますのでご期待ください。

今後も弊社はメルマガやセミナーなどでAutomotive SPICE for CSやAutomotive SPICE 4.0 などの最新の情報をお伝えしてまいります。

2021/5/14 大野 貴正