品質問題の発生や開発の遅延など、予期せずプロジェクトの目標を逸脱してしまうことがあります。これらをリスクとして予期し、予め適切な対策を講じることができるかどうかということがプロジェクトを成功に導く鍵と言えるでしょう。
今回のメルマガでは、このリスクを効果的に抽出するための手法についてご紹介いたします。
まず、従来のリスク抽出の典型的な取り組みとして、過去に発生した問題をチェックリスト化し、それらを一つずつ確認するという手法がよく見られます。しかしながら、この手法では年々チェック項目が増えていく一方で、過去に経験していない問題については、新たにリスクとして抽出することが難しい場合があります。また、膨大化したチェック項目は形骸化を生みやすいという課題もあります。
それに対し、効率よくリスク抽出を行う手法として近年注目されているRBSという手法があります。RBSはRisk Breakdown Structureの略であり、リスクが見えてくるまで要素を分解し、構造化することによって、漏れなくリスク項目を抽出する手法です。RBSは、非常に多くの要求事項があってもリスクを網羅的に扱うことができるため、大規模かつ複雑な建築業界や、最近ではIT分野でも広く適用されている手法です。
以下にRBS手法の手順を簡単にご紹介します。
手順1:RBSのマトリクスを用意する
手順2:プロジェクトの目標達成に向けた要素を洗い出す
手順3:発生する作業要素を洗い出す
手順4:RBSマトリクスの各要素の交点ごとに、想定されるリスクについてブレインストーミングをしながら抽出する
ここでのポイントは、目標達成に関連する作業に対してリソース(ヒト、モノ、カネ)の欠落を網羅的に確認することにあります。特にヒトについては、確保できる時間、保有しているスキル・経験、割り当てられた責任と権限の観点で詳細に確認することが重要です。
従来のチェックリストを用いたリスク抽出と比較すると、以下のような利点が挙げられます。
利点1:網羅的に抽出できることで、より漏れの少ないリスク抽出に貢献できる
利点2:リスクを構造的に俯瞰して見ることによって、各リスクがどの作業で対応すべきか見当が付けやすい
利点3:リスクが具体的な表現になりやすく、対策案を検討しやすい
従来のチェックリストを用いたリスク抽出の場合は、過去に経験していないリスクの抽出がしにくい点がありますが、上記の手法は将来起こり得る事象を予測しながら網羅的にリスクを抽出するのに効果的です。
当社では、今回ご紹介したRBSを用いたリスク管理のワークショップを開催しております。ワークショップでは、お客様の実際のプロジェクトの状況に対してRBSを適用し、リスク抽出を行うことで、より実践的にリスク管理手法を学んでいただくことができます。リスクの管理にお悩みの場合は、お気軽にお問い合わせください。
2021/6/17 長澤 克仁