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VDA Automotive SYS ConferenceからのAutomotive SPICE 4.0の最新動向

去る6月28日から30日の3日間でVDA Automotive SYS Conference 2022が開催されました。新型コロナウィルスの影響により、昨年は完全なオンラインでの開催でしたが、今年は現地の会場とオンラインによるハイブリッド開催となり、少しずつ従来の開催スタイルへと戻りつつあります。

今回のカンファレンスでは、昨今の自動運転や電動化に関する開発の拡大を受ける形で、関連したトピックスが多く扱われました。その中でも大きな関心を集めたのがAutomotive SPICE 4.0(以下V4.0)やそれに付随する各モデルとアセッサー制度の変更です。

本メルマガでは、カンファレンスで発表されたV4.0および付随する各モデルの一部についてご紹介いたします。
まず、V4.0のもっとも大きな特徴は、前述のような昨今の開発の実態に合わせる形で、多くのプロセスが追加されたことにあります。Automotive SPICEとしては、2021年にサイバーセキュリティ向けのプロセスを含んだモデルを追加リリースしておりましたが、Automotive SPICEに含まれていなかったMechanical SPICE、Hardware SPICEに該当するプロセスを新たに取り込みます。さらに、機械学習とデータ管理に関するプロセスも新たに取り込まれる予定です。
逆に、他プロセスやGPとの重複があったり、使われる頻度の低かったりした取得プロセス群、支援プロセス群などの11プロセスが削除される見込みです。ただ、削除予定のプロセスの中には、intacsが新たに公開したTrustworthyアセスメントの対象プロセスも含まれており、VDAとintacsの間でさらなる調整が行われる見込みです。
GPについても見直しが行われ、能力レベル3においてはPA3.1と3.2ではGPが正対称となるように整理されGPの数も同じとなります。また、アセスメントのスコープとして、従来のVDAスコープに代わって新たにBASICとFLEXという概念が採用されます。

さらに、昨今一部のOEMがサプライヤー評価の目的で行っているポテンシャル分析が従来のアセスメントとは別のPAMとして正式に追加される予定です。評定はNPLFではなくグリーン、イエロー、レッドの三段階になります。

[ロードマップ]
1.Automotive SPICE 4.0は2023年6月にリリース予定
2.Automotive SPICEガイドライン2.0も2023年6月にリリース予定
3.Automotive SPICE 3.1からの移行期間は2024年6月まで
4.Automotive SPICE for CSはマイナーバージョンアップを経てV4.0に統合される

本カンファレンスの初日に、機械学習ベースの機能を開発するために、Automotive SPICEプロセスと連携したデータドリブンエンジニアリングプロセスが紹介されました。その中で、V4.0で追加される機械学習プロセス(MLE.x)とSYS.x/SWE.xとの位置づけ、および並行して実施される機械学習データのエンジニアリングプロセスとの関わりについて解説されていましたので、概要を紹介します。

機械学習ベースの機能を開発する上で、機械学習のデータに関する要件、およびトレーニングの実施を扱う点が、通常の車載システム/ソフトウェア開発と大きく異なります。この背景から、V4.0ではSYS.xやSWE.xと分離した形で、機械学習プロセスとして新たにMLE.xが定義されます。ソフトウェア開発という面では、SWE.xとプロセス要素は同じですが、機械学習に必要なデータ設計、検証およびトレーニングの実施の点で両プロセスに差異があります。

ソフトウェア要件分析に該当するMLE.1で重要なのが、機械学習で必要なデータセットを定義することです。ODD(運行設計領域:設計上、各自動運転システムが作動する前提となる走行環境条件)分析に基づいた車両レベルおよびシステムレベルのデータセット要件を受けて、データセットが要件化されます。MLE.2では、機械学習モデルの構造設計(ネットワーク階層数、最適化の選択など)、学習データ設計を行います。

そして、SWE.3に該当するMLE.3は、機械学習モデルのトレーニング実施、および最適化を含みます。MLE.4におけるユニットテストでは、トレーニングの検証が実施されます。

機械学習モデルに必要なデータエンジニアリングを考慮し、既存のSYS.1が拡張、およびVモデル上でSYS.1の対抗位置になるVAL.1が追加定義されます。
・SYS.1の拡張:機械学習モデルの設計、データ設計にとって、ODDの分析が重要になります。
・VAL.1:車両でモニタリングし、バリデーションを実施し、この結果は、SYS.1(ODD)へフィードバックします。

本メルマガで紹介したトピックについては、7月22日開催予定の「intacs日本地域代表無償セミナー」で改めて紹介いたします。皆様の参加を心より、お待ちいたします。

2022/7/6 マーケティングチーム