前回のメルマガでは欧州を筆頭に自動車産業でアジャイル開発手法が普及し始めた背景から、昨年発行されたAgile SPICE PRM/PAMの概要までを解説しました。後半にあたる今回は、アジャイルプロセス(AGL)とAutomotive SPICE 3.1 エンジニアリングプロセスとのマッピング、およびアジャイル文脈でのエンジニアリングプロセスの基本プラクティスに対する解釈についてAgile SPICE PRM/PAMで示されている内容の一部をご紹介します。
まず初めにAGL.1 Agile Work ManagementプロセスとMAN.3 プロジェクト管理の対応関係です。Agile SPICE PRM/PAMでは下図のように、各プロセスの基本プラクティス同士をマッピングすることで対応関係が整理されています。なお、マトリクス中のXはAGL.1の基本プラクティスとMAN.3の基本プラクティスが直接的に関連付けられていること、(X)はAGL.1の基本プラクティスがACQ.4 サプライヤー監視の基本プラクティスのうちのサプライヤーとの開発活動のレビュー(BP3)に間接的に関連付けられていることを表しています。このマトリクスは、AGL.1 Agile Work Managementプロセスの基本プラクティスをすべて実施することで、MAN.3 プロジェクト管理のすべての基本プラクティスの意図が達成されることを表しています。
続いて、アジャイル文脈でのエンジニアリングプロセスの基本プラクティスに対する解釈についてです。ここでは、SYS.2 システム要件分析を例にご説明します。Agile SPICE PRM/PAMでは下表のように、Automotive SPICE 3.1が定義しているプロセス成果(Process Outcome)に対し、アジャイル環境での解釈を助けるためのヒントが記載されています。例えば、「定義された一連のシステム要件が確立されている」というプロセス成果に対しては、「機能要求と非機能要求の両方を含むプロダクトバックログ(2)が確立されていること」という説明がなされています。これらのヒントを参考にすることで、Automotive SPICEの要求事項を満たしながらアジャイル開発手法の導入による改善を進めていくことができます。
ここまで、欧州を筆頭に自動車産業でアジャイル開発手法が普及し始めた背景から、昨年発行されたAgile SPICE PRM/PAMの概要までを解説しました。本メルマガにより、皆様がアジャイル導入の必要性とAgile SPICE PRM/PAMへの理解をより深められる一助となれたのであれば幸いです。弊社では来年からの開講に向けAgile SPICEに関するトレーニングの作成を進めております。Agile SPICEトレーニングに対する要望などがあればぜひお気軽にご連絡ください。
2022/12/14 蛸島 昭之
(2)プロダクトバックログというスクラムの用語が使われていますが、Agile SPICEではスクラムやXPなどの特定のアジャイル開発手法を想定してはいません。