VDA Automotive SYS Conference 速報

去る7月10日から12日にドイツ ベルリンにてAutomotive SYS Conference 2023が開催されました。今回のメルマガでは、このカンファレンスで発表された最新情報を速報としてご紹介いたします。

■Automotive SPICE 4.0およびAutomotive SPICEガイドライン 2.0
本カンファレンスでは、ワークショップおよびいくつかの講演を通じて、Automotive SPICE 4.0およびAutomotive SPICEガイドライン 2.0に関する議論と情報展開が行われました。ワークショップおよび講演の質疑応答は非常に活発なもので、バージョン4.0に関する賛同や疑問、懸念点など多くの意見が議論されました。バージョン4.0のドラフト版は、6月6日に一般公開されておりますが、それに対して現時点で約2700件のレビューコメントが寄せられており、策定チームでは、それらに加えて、本カンファレンスで出た意見も集約した上で、正式発行版へ反映される予定です。

バージョン4.0では、これまで重複していた観点が整理されたり、曖昧な解釈になりがちだったりした観点が、より明確化されたことによって、アセッサーにとってはより使いやすいプロセスアセスメントモデルとなったという意見が多く出ていました。

これまで、Automotive SPICEがバージョンアップする度に、アセスメント対象の組織はプロセスを変えなければならないという誤解が見受けられましたが、Automotive SPICEのPAMを策定するVDA、およびAutomotive SPICEのアセッサートレーニング制度を構築するintacsからは、以下の見解が強調されました。

・4.0へのバージョンアップによって影響を受けるのはアセッサーだけである。
プロジェクト／組織がバージョン4.0に合わせてプロセスを変える必要はない。
・PAMはプロジェクト／組織が従うべき技術標準ではない。
PAMに記載されている情報だけに基づいてプロセス改善に取り組むべきではない。

ただし、バージョン4.0では、電気・電子系ハードウェアや機械学習に関するエンジニアリングプロセスが新たに追加されました。このような新たに追加定義されたプロセスにおいては、アセスメント対象となり始めますので、適宜プロセス改善を進める必要があります。また、バージョン4.0には含まれませんでしたが、今後はメカや機能安全に関する追加も検討されているため、先を見越したプロセス改善の着手が求められています。

■intacs認定アセッサートレーニング
以前のメルマガでもご案内しておりました通り、intacs認定アセッサートレーニングの体系が大きく変わります。本カンファレンスでは、新体系に移行するに当たって、改めてルールの説明が行われました。新体系の内容は概ね以前にご紹介した内容と同じですが、付け加えられた新ルールとしては、Provisionalアセッサーは次の資格更新までにアセスメントを経験し、EE-ATを最低一つ獲得することが義務付けられます。これまでは、アセッサーとしての活動を一切行っていなくてもProvisionalの資格維持が可能でしたが、アセッサーである以上はアセスメントを継続的に実施すべきということが方針として打ち出されました。

■その他一般発表
今年は、コロナ後初めての対面のみでの開催でしたが、まだコロナの影響が完全に回復していないためか、発表の件数はやや少ない状況でした。今回は当社からもアセッサー育成に関する経験を発表いたしました。当社ではこれまでintacs認定トレーニングプロバイダーとして、多くのアセッサーの皆さまのトレーニングを担当させていただいてきましたが、それに加えて単に資格を取得していただくだけではなく、独自でアセスメントを実施できるスキルを身につけていただくべく、当社グループ会社のアセッサー・アカデミーによるアセッサー育成サービスを展開して参りました。アセッサー・アカデミーでは、アセスメントの回数を重ねるだけでは効率的に習得しにくいスキルを体系化し、アセスメントスキルの向上を支援して参りました。この取り組みには多くの賛同をいただくことができました。引き続きサービス品質の向上に努めて参ります。

以上、簡単ではございますが、カンファレンスで発表された最新情報の速報となります。詳細な情報に関しましては、以下の日程で開催されるintacs日本代表セミナーにて紹介させていただく予定です。

[intacs日本地域代表無償セミナー～VDA Automotive SYS Conference 速報～ 開催日程]
開催日：7/21(金), 7/31(月)　各日8:30～9:00頃
お申込先：https://biz3.co.jp/publictraining/5331

2023/7/18 田渕 一成