今回のメルマガでは、機械システムの開発現場から見えてくる課題とその課題解決、Mechanical SPICEの効果的な活用についてご紹介したいと思います。
弊社で機械エンジニアリング領域のプロセス改善支援を実施している中で、現状の開発をヒアリングさせてもらうと、機械システムを構成する部品の図面、組み立てを指示する図面、FMEAを実施した結果、等は残っているが、これらの設計根拠となった要件定義、機械システムアーキテクチャ設計、等の設計書が存在していない、機械部品、機械システムのテスト結果は残っているが、なぜこういったテストを実施する必要があったのかを示す設計とテストの関係を示した文書が存在していない、等々のトレーサビリティ構築に帰着できる課題が多々見受けられます。
上述のように図面、および設計の結果だけが存在している場合、個人の開発経験を元に設計し結果を導き出している場合がほとんどで、改めてこれらの設計結果がどのような要件に基づき、どのような設計により導き出されたのか?といった設計結果の根拠が不明確になってしまっているという課題が見受けられます。このような状況は、機械システムの品質に影響を与える課題の一つと捉えることができます。
こういった課題を解決する手段の一つとしてMechanical SPICEの活用を考えてみます。
Mechanical SPICEの中では、上述のトレーサビリティ構築に帰着できる課題は、一連の設計からテストまでの各プロセスの中で一貫性と双方向トレーサビリティが求められています。設計根拠に対する課題についても、上位要求から要件を導出し、その要件を元に設計を段階的に詳細化していくと同時に一貫性とトレーサビリティを確立していくことで設計根拠を明確にしながら開発を進めていけるようになります。
このように、Mechanical SPICEを活用し、こういった活動をプロセス面から整備、実施することによって品質に影響を与える課題を解決できる可能性があります。
また、機械システムの品質に影響を与える課題の解決のためには、上述のプロセス面からの整備と同時に成果物品質にも着目する必要があります。例えば、機械システムの品質を決める一つの要因として、どれだけ要件を網羅的に定義できるかがポイントとなります。
この要件が元になって、どのような機械システムを構築し、どのような機能、性能を実現するのかを把握し設計していくことによって、想定外の不具合の発生を低減することができるようになります。
機械システムの要件や機械部品の要件は、機械システムに対する顧客からの要求、運用環境、機械システムアーキテクチャ設計の結果、および過去の開発経験等からくる対象となる機械システム、機械部品に対する必要要件、機械システムの組み立て、および部品の製造、調達先からくる製造要求、等々から定義していきます。
要件をまとめる時には、機械システム、機械部品の設計において、何が制約条件となり、何が機械システム、機械部品の要件となりうるのかを見極めた上で、要件化することが重要となります。理由は、設計では制約条件を踏まえながらどのように実現していくのかを考えることが必要になりますので、制約条件と要件を切り分けておくことが重要となるためです。
こういったことを考慮し、要件を定義しておくことで設計の品質に影響を与える課題の解決、品質向上につながっていきます。
また、各プロセスで作成される設計成果物を管理、資産化し、次開発でその資産を活用していく仕組みを構築しておくことで、設計品質の向上、設計効率の向上が期待できます。設計成果物の資産化だけでなく、個人持ちの知識や技術をガイドライン、チェックリスト等のプロセス資産に反映することも設計効率向上に貢献します。
このように、Mechanical SPICEを活用し機械システム開発をプロセス面、成果物品質から整備することで機械システムの品質向上、開発効率向上に取り組んでみてはいかがでしょうか?
本メルマガでMechanical SPICEの効果的な活用についてご紹介させていただきました。弊社ではMechanical SPICEの適用をご支援させていただく機会が増えており、機械エンジニアリングプロセスにおけるプロセス改善の実績がございます。また、各プロセスの詳細な解説を含むMechanical SPICEのトレーニングを下記日程で開催します。ご興味がある方は下記お申込み先からお申込みください。
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(Mechanical SPICEプロセス基礎トレーニング)
2024/2/9 安斎 則嗣