2023年12月にAutomotive SPICE 4.0がリリースされ、プラグインという形で参照されていたHardware SPICEがハードウェアエンジニアリング(HWE)として取り込まれました。これにより、ハードウェア領域におけるプロセスの構築・改善を検討されている会社様もいらっしゃると思います。
2011年に車載システム向け機能安全規格 ISO 26262 の初版が発行されて以降、 ハードウェア開発プロセスの構築を進められた会社様において、規格への準拠性を示しやすくするために、従来のプロセスとは別に規格要求に特化したプロセスを構築されるケースがあります。
この場合、規格準拠の視点では、規格ごとに活動や作業成果物が切り分けられるため、規格要求に対するアウトプットは示しやすくなる一方で、プロセスを実行するプロジェクト側の活動視点では、個々の規格に合わせた類似の活動を実行しなくてならず、作業の重複や類似する作業成果物の作成によって開発工数の増大を招くことになります。また、開発製品の設計品質視点では、個々の規格に合わせた活動に分かれることで、製品に実装される機能間の一貫性が示しにくくなる問題も発生します。
そのため、QM製品開発プロセスをベースに活動単位で類似したプロセスを融合し、規格などで特化した活動をadd-onしていくようにプロセス構築・改善を進めていくことが望ましいと考えらます。
本メールマガジンでは、Automotive SPICE 4.0のHWE.1とISO 26262:2018 Part5 5.6を例に、具体的なプロセスの融合について解説いたします。
Automotive SPICE 4.0のHWEとISO 26262:2018 Part5のプロセスは以下のように類似した構成となっています。
さらに、HWE.1 ハードウェア要求分析とISO 26262:2018 Part5 Clause 6 ハードウェア安全要求の仕様についてみてみると、以下のような関係性がみられます。
この関係性を基に、ハードウェア要求の仕様化を例にプロセスの融合を考えてみると、以下のようにまとめることができます。
Automotive SPICEでは、何をしなければならないのか、その理由や何が技術的に依存しているかについて定義されていますが、具体的な手法(どの様なことに注意してどの様に活動を行うのか)は定義されていません。そのため、Automotive SPICEを参照して活動を定義し、具体的な手法については、自社の従来のプロセスや活動を紐づけ、ISO 26262 に特化した活動をadd-onするように定義します。これにより、設計担当者がプロセスを理解しやすくなり、実プロジェクトにおけるプロセスの実効性は高くなると思われます。
Automotive SPICEやISO 26262のように、各プロセス間には表現や粒度の違いはあるものの関連性の高い記述が多くみられます。
各種国際規格や法規への対応に向けてプロセス構築・改善を進められる中で、実装するプロセスの目的やプロセス間の相互関係を理解し、可能な限り融合していくことで、不必要なプロセスの追加や変更を排除することができ、実プロジェクトで実行しやすいプロセスが構築できるのではないでしょうか。
弊社では、Automotive SPICEの他、各種国際規格(ISO 26262、ISO/SAE 21434、ISO 21448 など)への適用支援や、プロセス改善担当者様や管理者様、開発担当者様へ向けたAutomotive SPICEの概要や各プロセスを解説するトレーニングを実施しております。
詳細につきましてはWEB(https://biz3.co.jp/publictraining_category/automotivespiceengineer)にて案内をさせて頂いておりますので、興味がある方は是非ご受講をご検討頂ければ幸いです。
2024/4/19 大塚 愁