先日、7月3日から5日にドイツ・ナウエンにてAutomotive SYS Conference 2024が開催されました。今回のメルマガでは、このカンファレンスで発表された最新情報を速報としてご紹介いたします。
■intacs認定Automotive SPICE アセッサー制度
以前のメルマガでもご案内しておりましたが、intacs認定のAutomotive SPICEアセッサー制度が2024年10月1日にリニューアルされます。この計画は当初2022年頃を予定していましたが、Automotive SPICE V4.0およびAutomotive SPICEガイドライン V2.0の正式リリースを待つ形で準備が進められ、現在に至っています。
新たな制度では、既存のアセッサーランク(Provisional、Competent、Principal)とインストラクターランクに加えて、Process Expertという資格が新設されます。Process Expert資格を取得するためには、4日間のトレーニングの受講と試験の合格が求められます。この資格はプロセス改善に関する知識を持つ専門家と位置付けられ、アセッサーを目指す方々だけでなく、組織内のプロセス改善や品質保証活動を担う方々、さらには開発現場でプロジェクトをリードするリーダークラスの方々も対象となります。
また、新制度ではProvisionalアセッサートレーニングを受講するための前提条件として、Process Expert資格を保有していることが求められます。さらに、Competentアセッサー候補に対するオブザベーションの質向上のため、今後はカテゴリAかBのアセスメントを5回以上リードアセッサーとして経験しているアセッサーでなければ、オブザベーションの実施ができなくなるという条件も導入されます。
■Potential Analysis PAM
Automotive SPICEに基づくアセスメントよりも短期間で効率的に現状の分析が可能なモデルとして、Potential Analysis PAMが今年の夏にリリースされます。Potential Analysisの特徴は以下の通りです。
・対象プロセスは柔軟に選択可能
・インタビューは2~3日程度で実施可能
・EEとしてのカウントが可能(合計50時間に満たない場合は合算してカウント)
・Potential Analysisの結果は正式なアセスメント結果としては扱われない
Potential Analysis PAMに対するintacs認定エクステンショントレーニングは2025年に提供開始となります。Potential Analysisは、リードアセッサーがこのトレーニングを受講後に実施できるようになります。
本カンファレンスでは、Automotive SPICEおよびPotential AnalysisのPAMを開発しているVDAのワーキンググループ13のメンバーによるワークショップが開催され、受講者はグループ演習を通じてPotential Analysisの使い方を学びました。
■AIの活用
車載システムにおけるAI活用が進み、Automotive SPICE V4.0にも機械学習のプロセスが追加されました。このトレンドは昨年のカンファレンスでも大きく取り上げられていましたが、今年はAIを車載システムの開発に適用している事例がいくつか紹介されました。要求分析、文書レビュー、テストケース作成など、開発の様々な場面でAIが活用されています。AI活用は急速な広まりを見せており、AI活用に合わせた開発プロセスの改善とその効果測定も進められています。
■SOP後のプロセス
従来のAutomotive SPICEはSOPまでの開発プロジェクトに焦点を当てており、SOP後の活動が含まれていませんでした。これは、VDAから発行されているAutomotive SPICE以外の文書との重複を避けるためです。しかしながら、昨今の車載システムにおいては、OTA(Over-The-Air)による既存ソフトウェアのアップデートやSDV(Software Defined Vehicle)として追加提供される機能など、SOPという明確な区切りで扱いにくいケースが増えてきました。
本カンファレンスでは、OTAによるソフトウェアアップデートを例に、既存のAutomotive SPICEに対する考察がワークショップ形式で行われました。新たなプロセスを追加すべきという意見、既存プロセスに備考を追加すべきという意見など、様々な意見が交わされました。これらの意見はAutomotive SPICE策定チームへ提供され、次バージョン策定のインプットとなります。
■Automotive SPICE for Cybersecurity PAM
Automotive SPICE for Cybersecurity PAMの第2版のリリースに向けて、現在VDAのワーキンググループ13のメンバーが活動を進めています。本PAMとガイドラインのリリースは、2024年12月に予定されています。
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PAトレーニング追加開催
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上記メルマガでご紹介しております通り、2024年10月1日からAutomotive SPICEのアセッサー制度がリニューアルされます。リニューアル後は、Provisionalアセッサートレーニングを受講いただく前に、Process Expertトレーニングの受講と試験合格が必要となります。
これに伴い、現行制度のProvisionalトレーニングは2024年9月末をもって終了となりますが、現行制度でのトレーニングをご希望される方のお問合せが増えておりますので、急遽8月に追加開催をさせていただくこととなりました。ご受講をご検討の方は、ぜひこの機会にお申込みください。
日程:
8月26日~30日(オンライン開催)
9月 9日~13日(対面開催)
9月 9日~13日(オンライン開催)注記:同一日程で対面とオンラインをそれぞれ開催
トレーニングの詳細とお申込みはこちら
https://biz3.co.jp/publictraining/33
2024/7/17 田渕 一成