Automotive SPICEについて

Intro to Automotive SPICE

2.2. 新設プロセスの詳細:MLE

昨今、自動車の自動運転等に導入が進んでいる機械学習に関するエンジニアリングプロセスと、その機械学習データの管理に関する支援プロセスが新たに定義されました。

MLE.1  機械学習要求分析:

本プロセスにおける機械学習は、ソフトウェアとして実装されるものを想定しています。
そのため、機械学習要求に対する要求は、SWE.1で扱うソフトウェア要求の一部として位置づけられ、SWE.1と同様に機械学習要求としての実現可能性、検証可能性等の分析が求められます。
また、後述のSUP.11 機械学習データ管理のための管理要求として、機械学習データに対する要求もこのプロセスで扱われます。

MLE.2 機械学習アーキテクチャ:

MLE.2では、機械学習におけるトレーニングや機械学習のデプロイを行うためのアーキテクチャを決定すること。そして、その決定したアーキテクチャが意図通りであることを確認することが求められます。このアーキテクチャには、機械学習モデル、前後処理、ハイパーパラメータ(モデルのパフォーマンスを決定するためのパラメータ)も含まれます。
また、機械学習を行うためのハイパーパラメータの初期値の設定や、トレーニングおよび運用に必要なリソースの決定も含まれます。

MLE.3 機械学習トレーニング:

MLE.3では、機械学習要求を満たすようにモデルに対するトレーニングを実施することが求められます。
そのため、トレーニングや妥当性確認の開始/終了基準、ハイパーパラメータの最適化方法、学習用データの作成/変更方法、実施環境などを決定し、作成された学習用データを用いてトレーニングを実施します。
なお、本プロセスで用いられる妥当性確認という用語は、VAL.1の妥当性確認とは異なり、上記トレーニングにおけるハイパーパラメータの最適化を意味しています。

MLE.4 機械学習モデルテスト:

MLE.4では、トレーニング済みのモデル、およびトレーニング済みのモデルから導出されたデプロイ用のモデルが、機械学習要求を満たしていることを保証することが求められます。
そのため、テストの開始/終了基準、テストに用いるデータセット、期待されるテスト結果、テスト用データの作成/変更方法、実施環境などを決定し、モデルに対するテストを実施します。

SUP.11 機械学習データ管理:

一連の機械学習エンジニアリングプロセスに用いる機械学習データに対する管理プロセスとして、SUP.11が新たな支援プロセスとして追加されました。
本プロセスでは、データ管理のための活動、データを管理するためのリソース、データのライフサイクル、利害関係者の窓口などを含んだデータ管理の仕組みを確立することや、データの品質を維持するため活動が求められます。