6. 能力レベル
Automotive SPICEではISO/IEC 33020に定義されたフレームワークに基づいて各プロセスの能力レベルを判定する。
「1.Automotive SPICEの概要」で、2次元モデルの横軸と縦軸について解説したが、能力レベルを判定する際はプロセスアセスメントモデル(PAM)を用いて実施する。
まず、能力レベル1の判定をする際はPAMのプロセス実施インジケータを用いて実施する。
プロセス参照モデル(PRM)では各プロセスの「プロセス目的」と「プロセス成果」が定義されているが、 PAMでは、これらに加えて、プロセス成果を評価するための指標として、さらに「基本プラクティス」と「アウトプット情報項目」を追加している。
「1.Automotive SPICEの概要」で、2次元モデルの横軸と縦軸について解説したが、能力レベルを判定する際はプロセスアセスメントモデル(PAM)を用いて実施する。
まず、能力レベル1の判定をする際はPAMのプロセス実施インジケータを用いて実施する。
プロセス参照モデル(PRM)では各プロセスの「プロセス目的」と「プロセス成果」が定義されているが、 PAMでは、これらに加えて、プロセス成果を評価するための指標として、さらに「基本プラクティス」と「アウトプット情報項目」を追加している。
次に、能力レベル2以上の判定をする際はPAMのプロセス能力インジケータを用いて実施する。
ISO/IEC 33020から能力レベルを引用した際に、いくつかの重要な定義を追加している。ISO/IEC 33020の「プロセス能力の測定の枠組み」では、「プロセス能力レベル」と「プロセス属性」およびその「達成成果」が定義されているが、 PAMでは、これらに加えて、達成成果を評価するための指標として、さらに「共通プラクティス」と「アウトプット情報項目」を追加している。
ISO/IEC 33020から能力レベルを引用した際に、いくつかの重要な定義を追加している。ISO/IEC 33020の「プロセス能力の測定の枠組み」では、「プロセス能力レベル」と「プロセス属性」およびその「達成成果」が定義されているが、 PAMでは、これらに加えて、達成成果を評価するための指標として、さらに「共通プラクティス」と「アウトプット情報項目」を追加している。
ここからは、能力レベル0から5のそれぞれの状態と、能力レベルを達成していく上でのポイント、V4.0で行われた能力レベルの整理について解説する。
[能力レベル0:不完全なプロセス]
このレベルは、該当プロセスにおいて最低限実施すべき活動が実施されていなかったり、最低限作成すべき作業成果物が作成されていなかったりする状態、または、プロセスの目的自体が達成されていない状態を示す。この状態にあるプロセスは、すでに問題の発生が顕著になっていることが多い。
このレベルは、該当プロセスにおいて最低限実施すべき活動が実施されていなかったり、最低限作成すべき作業成果物が作成されていなかったりする状態、または、プロセスの目的自体が達成されていない状態を示す。この状態にあるプロセスは、すでに問題の発生が顕著になっていることが多い。
[能力レベル1:実施されたプロセス]
このレベルは、該当プロセスにおいて最低限実施すべき活動が実施されており、それに伴う最低限作成すべき作業成果物が作成されている状態であり、プロセスの目的が達成されている状態を示す。この状態にあるプロセスは、最低限の成果を満足することが多いが、活動や作業成果物が実施者の能力に依存しがちであり、実施者によって成果にバラつきが見られることが多い。
能力レベル1を達成するためには、上記で述べた最低限の活動と情報項目を満足する必要がある。活動については、Automotive SPICEに定義された該当プロセスのプロセス成果、作業成果物については、該当プロセスのアウトプット情報項目の情報項目特性(Automotive SPICE 付録Bに定義)を参考に、自組織で必要な活動の内容、情報項目の内容を検討することを推奨する。
このレベルは、該当プロセスにおいて最低限実施すべき活動が実施されており、それに伴う最低限作成すべき作業成果物が作成されている状態であり、プロセスの目的が達成されている状態を示す。この状態にあるプロセスは、最低限の成果を満足することが多いが、活動や作業成果物が実施者の能力に依存しがちであり、実施者によって成果にバラつきが見られることが多い。
能力レベル1を達成するためには、上記で述べた最低限の活動と情報項目を満足する必要がある。活動については、Automotive SPICEに定義された該当プロセスのプロセス成果、作業成果物については、該当プロセスのアウトプット情報項目の情報項目特性(Automotive SPICE 付録Bに定義)を参考に、自組織で必要な活動の内容、情報項目の内容を検討することを推奨する。
[能力レベル2:管理されたプロセス]
このレベルは、該当プロセスにおいて活動が管理された方法(目的・目標を設定し、それに基づいた計画、監視、調整が行われている状態)で実施されており、それに伴う情報項目も管理された方法で作成、制御、維持されている状態を示す。この状態にあるプロセスは、プロセス実施者個人の能力のみに依存することなく、プロジェクトとしてある程度の品質を達成できるようになる。しかしながら、この状態は個々のプロジェクトにおける状態であり、組織内のすべてのプロジェクトが同じ状態を保証できているとは限らない。
能力レベル2を達成するためには、上記で述べた該当プロセスの活動に対する管理された方法での実施と、情報項目に対する管理された方法での作成、制御、維持を行う必要がある。このレベルは、プロジェクト管理、構成管理、品質保証のプロセスと特に強い関連があり、これらのプロセスを強化していくことがレベルの達成において重要となる。
このレベルは、該当プロセスにおいて活動が管理された方法(目的・目標を設定し、それに基づいた計画、監視、調整が行われている状態)で実施されており、それに伴う情報項目も管理された方法で作成、制御、維持されている状態を示す。この状態にあるプロセスは、プロセス実施者個人の能力のみに依存することなく、プロジェクトとしてある程度の品質を達成できるようになる。しかしながら、この状態は個々のプロジェクトにおける状態であり、組織内のすべてのプロジェクトが同じ状態を保証できているとは限らない。
能力レベル2を達成するためには、上記で述べた該当プロセスの活動に対する管理された方法での実施と、情報項目に対する管理された方法での作成、制御、維持を行う必要がある。このレベルは、プロジェクト管理、構成管理、品質保証のプロセスと特に強い関連があり、これらのプロセスを強化していくことがレベルの達成において重要となる。
[能力レベル3:確立されたプロセス]
このレベルは、該当プロセスが組織の標準プロセスとして確立し、その標準プロセスに基づいて各プロジェクトが必要な活動を展開している状態である。また、組織の標準プロセスは、プロジェクトで実施されたプロセスのフィードバック等を元に継続的な改善を行う仕組みも確立している。つまり、組織やプロジェクトの変化に合わせて組織標準プロセスが最適な方向へ向かう仕組みが存在することになるが、後述のレベルのような定量的なプロセスのコントロールまでを保証している状態ではない。
能力レベル3を達成するためには、プロセスが組織標準プロセスとともに、プロジェクト毎の特性を違いに合わせて組織標準プロセスを仕立て直すテーラリングの仕組みの確立も必要である。また、プロジェクトに展開されたプロセスの有効性を確認するためのデータ収集も必要となる。これらの活動は、組織においてプロジェクト横断的に実施されるものであり、プロセス改善を推進する専門の部門を確立して管理に当たっている組織が多い。
このレベルは、該当プロセスが組織の標準プロセスとして確立し、その標準プロセスに基づいて各プロジェクトが必要な活動を展開している状態である。また、組織の標準プロセスは、プロジェクトで実施されたプロセスのフィードバック等を元に継続的な改善を行う仕組みも確立している。つまり、組織やプロジェクトの変化に合わせて組織標準プロセスが最適な方向へ向かう仕組みが存在することになるが、後述のレベルのような定量的なプロセスのコントロールまでを保証している状態ではない。
能力レベル3を達成するためには、プロセスが組織標準プロセスとともに、プロジェクト毎の特性を違いに合わせて組織標準プロセスを仕立て直すテーラリングの仕組みの確立も必要である。また、プロジェクトに展開されたプロセスの有効性を確認するためのデータ収集も必要となる。これらの活動は、組織においてプロジェクト横断的に実施されるものであり、プロセス改善を推進する専門の部門を確立して管理に当たっている組織が多い。
[能力レベル4:予測可能なプロセス]
このレベルは、事業目標と該当プロセスの成果を結びつけ、その成果を達成するために定量的な測定データに基づく予測と制御が行われている状態である。この状態になると、プロセスの成果達成を阻害する変動要因へのアプローチとして定量的測定データが用いられることでプロセスの成果が定義された目標範囲内で予測可能となる。
能力レベル4を達成するためには、前述の組織標準プロセスに対し、定量的な達成目標と測定データ、目標を阻害する変動要因に対する分析と対応の方法を確立して、定量的なデータに裏付けられたプロセス管理の仕組みを運用する必要がある。
このレベルは、事業目標と該当プロセスの成果を結びつけ、その成果を達成するために定量的な測定データに基づく予測と制御が行われている状態である。この状態になると、プロセスの成果達成を阻害する変動要因へのアプローチとして定量的測定データが用いられることでプロセスの成果が定義された目標範囲内で予測可能となる。
能力レベル4を達成するためには、前述の組織標準プロセスに対し、定量的な達成目標と測定データ、目標を阻害する変動要因に対する分析と対応の方法を確立して、定量的なデータに裏付けられたプロセス管理の仕組みを運用する必要がある。
[能力レベル5:革新しているプロセス]
このレベルは、事業目標と該当プロセスの改善目標を結びつけ、プロセスが組織目標の変化に対応すべく継続的な改善の仕組みを確立している状態である。この状態になると、プロセスを制御するための測定データのバラつきを抑制するためにも定量的データを活用し、事業目標の達成をプロセス(=事業を動かすメカニズムそのもの)が完全に支配することになる。
能力レベル5を達成するためには、中長期的な事業戦略としてプロセス改善の戦略を決定する必要がある。
このレベルは、事業目標と該当プロセスの改善目標を結びつけ、プロセスが組織目標の変化に対応すべく継続的な改善の仕組みを確立している状態である。この状態になると、プロセスを制御するための測定データのバラつきを抑制するためにも定量的データを活用し、事業目標の達成をプロセス(=事業を動かすメカニズムそのもの)が完全に支配することになる。
能力レベル5を達成するためには、中長期的な事業戦略としてプロセス改善の戦略を決定する必要がある。
次にV4.0で実施された能力レベルの整理について解説する。
発行当初、Automotive SPICEでは能力レベル1と2の概念が曖昧な状態で定義されていたため、V3.0ではエンジニアリングプロセスV字左側における検証の概念をSUP.2およびGP2.2.4に集約するなど重複した指標を回避する試みが行われ、戦略と計画の概念が明確化されてきた。
さらに、V4.0では能力レベル1に残っていた体系的な文書化に関する概念が能力レベル2に移された。
これにより、従来のテスト系プロセスや支援系プロセスのBP1に存在していた戦略が、GP2.1.1に集約されるなどの変更が行われた。
従来の戦略も、能力レベル1では体系的な定義を求めていたわけではないが、一部のアセッサーは、戦略というPAMの記載に基づいて体系的な定義を期待してしまっていたことで、文書の欠落を能力レベル1の弱みと捉えてしまっていた。
この点に関するV4.0での変更は、能力レベル1と2でそれぞれ期待される状態を明確に区別するための意図である。
それに伴い、従来の戦略にその一部として含まれていた当該プロセスの実施に必要な取り決めは、Measure(手段)という用語として能力レベル1の基本プラクティスに新たに定義された。
検証系プロセス(旧テスト系プロセス)においては、従来のテスト戦略が検証手段という用語となり、この検証手段には検証技法、合否基準を含むテストケース、開始/終了基準、検証環境などが含まれる。
ここで注意するべきことは、この変更で能力レベル1の獲得が容易になったと錯覚することである。この変更はアセスメントモデルをわかりやすく整理しただけで、結局Automotive SPICEとして求められていることはV3.1から変わってはいない。
その他、冗長だったり、強い依存関係を持っていたりした基本プラクティスも統合された。
エンジニアリングプロセスに含まれる一貫性と双方向トレーサビリティもその一つである。
ここの詳細に関しては、後の章で詳しく説明する。
V4.0では、このような依存関係を極力無くすことで、アセスメントの労力を極力低減することを意図して、いくつかのBPの統合が行われた。
なお、BPの統廃合によって全体的にBPの数が減り、旧VDAスコープでの比較でV3.1のBP数が127だったのに対し、V4.0では97となる。
ただし、前述した能力レベル2へ移された観点を除いて、能力レベル1で考慮すべき観点が減ったわけではない。
発行当初、Automotive SPICEでは能力レベル1と2の概念が曖昧な状態で定義されていたため、V3.0ではエンジニアリングプロセスV字左側における検証の概念をSUP.2およびGP2.2.4に集約するなど重複した指標を回避する試みが行われ、戦略と計画の概念が明確化されてきた。
さらに、V4.0では能力レベル1に残っていた体系的な文書化に関する概念が能力レベル2に移された。
これにより、従来のテスト系プロセスや支援系プロセスのBP1に存在していた戦略が、GP2.1.1に集約されるなどの変更が行われた。
従来の戦略も、能力レベル1では体系的な定義を求めていたわけではないが、一部のアセッサーは、戦略というPAMの記載に基づいて体系的な定義を期待してしまっていたことで、文書の欠落を能力レベル1の弱みと捉えてしまっていた。
この点に関するV4.0での変更は、能力レベル1と2でそれぞれ期待される状態を明確に区別するための意図である。
それに伴い、従来の戦略にその一部として含まれていた当該プロセスの実施に必要な取り決めは、Measure(手段)という用語として能力レベル1の基本プラクティスに新たに定義された。
検証系プロセス(旧テスト系プロセス)においては、従来のテスト戦略が検証手段という用語となり、この検証手段には検証技法、合否基準を含むテストケース、開始/終了基準、検証環境などが含まれる。
ここで注意するべきことは、この変更で能力レベル1の獲得が容易になったと錯覚することである。この変更はアセスメントモデルをわかりやすく整理しただけで、結局Automotive SPICEとして求められていることはV3.1から変わってはいない。
その他、冗長だったり、強い依存関係を持っていたりした基本プラクティスも統合された。
エンジニアリングプロセスに含まれる一貫性と双方向トレーサビリティもその一つである。
ここの詳細に関しては、後の章で詳しく説明する。
V4.0では、このような依存関係を極力無くすことで、アセスメントの労力を極力低減することを意図して、いくつかのBPの統合が行われた。
なお、BPの統廃合によって全体的にBPの数が減り、旧VDAスコープでの比較でV3.1のBP数が127だったのに対し、V4.0では97となる。
ただし、前述した能力レベル2へ移された観点を除いて、能力レベル1で考慮すべき観点が減ったわけではない。