Automotive SPICEについて

Intro to Automotive SPICE

4. 能力レベルの整理

バージョン3.0では、エンジニアリングプロセスV字左側における検証の概念をSUP.2およびGP2.2.4に集約するなど、Automotive SPICEでは、重複した指標を回避する試みが従来から行われてきました。
バージョン4.0では、さらに能力レベル1に残っていた体系的な文書化に関する概念が能力レベル2に移されました。
これにより、従来のテスト系プロセスや支援系プロセスのBP1に存在していた戦略が、GP2.1.1に集約されるなどの変更が行われました。
従来の戦略も、能力レベル1では体系的な定義を求めていたわけではありませんでしたが、一部のアセッサーは、戦略というPAMの記載に基づいて体系的な定義を期待してしまっていたことで、文書の欠落を能力レベル1の弱みと捉えてしまっていました。
この点に関するバージョン4.0での変更は、能力レベル1と2でそれぞれ期待される状態を明確に区別するための意図です。
それに伴い、従来の戦略にその一部として含まれていた当該プロセスの実施に必要な取り決めは、Measure(手段)という用語として能力レベル1に新たに定義されました。
検証系プロセス(旧テスト系プロセス)においては、従来のテスト戦略が検証手段という用語となり、この検証手段には検証技法、合否基準を含むテストケース、開始/終了基準、検証環境などが含まれます。
  
その他、冗長だったり、強い依存関係を持っていたりしたBPも統合されました。
エンジニアリングプロセスに含まれる一貫性と双方向トレーサビリティもその一つです。
元々、バージョン2.5までは、一貫性と双方向トレーサビリティが一つのBPでしたが、一貫性を確保することよりもトレーサビリティを確立することに着目されがちであったことや、トレーサビリティの確立は一貫性を確保する以外の目的でも行われることから、バージョン3.0ではこれらが別のBPとして定義されました。
しかし、これらが別のBPとして定義されることで、アセッサーは評定時にこれらBP間の依存関係を考慮する必要が出てしまいます。
バージョン4.0では、このような依存関係を極力無くすことで、アセスメントの労力を極力低減することを意図して、いくつかのBPの統合が行われました。
 
なお、BPの統廃合によって全体的にBPの数が減り、旧VDAスコープでの比較でバージョン3.1のBP数が127だったのに対し、バージョン4.0では97となります。
ただし、前述した能力レベル2へ移された観点を除いて、能力レベル1で考慮すべき観点が減ったわけではありません。

出典:VDA Automotive SYS Conference 2023、VDA WG13発表資料