Automotive SPICE 3.1

Intro to Automotive SPICE 3.1

5. OEMにおける活用

Automotive SPICEが誕生した背景には、自動車メーカー(以下、OEM)が自動車部品メーカー(以下、サプライヤー)の開発プロセスを改善し、製品の品質を向上させたいという狙いがあった。そのため、Automotive SPICEには自動車部品メーカーが製品開発において取り組むべきプロセスを確認するための視点が反映され、これらが今日までに試行錯誤を繰り返しながら新しいバージョンの中で改定を繰り返してきた。

そして、欧州のOEMはAutomotive SPICEの能力レベル2もしくは3の達成をサプライヤーに対する要求事項として掲げ、サプライヤーの開発プロセスの改善を強く促してきたのである。その結果として、特に欧州のOEMとのビジネスを続けるサプライヤーにおいては、Automotive SPICEに基づくプロセス改善が広く定着している。

本項では、日本のOEMの視点でAutomotive SPICEの活用を探る。

従来、日本のOEM-サプライヤー間における開発のアプローチと、欧州のそれは大きく異なっていた。日本のOEMとサプライヤーの間には、詳細な要求仕様書の受け渡しがなかったとしても、完成形のイメージを繰り返し議論したり、OEMから要求されていなかったとしてもより良い機能をサプライヤーが実現したりすることで開発を進めてきた。長い付き合いの中から生まれた“すり合わせ”と“忖度”によるものづくりである。

しかし、この方法は日本以外のサプライヤーとの間では通用しない。要求を明確にするための議論は行われるものの、当然ながら要求していないものは実現されない。

ADASや自動運転など、従来の車両に搭載されていなかった新たな機能が増える中、日本のOEMにおいても新たな海外サプライヤーとのビジネスが増えていっており、海外サプライヤーとの付き合い方が課題になっているケースが増えている。

そのような状況の中、日本のOEMの中でも海外サプライヤーとのビジネスにおいてAutomotive SPICEを活用する動きが本格化しつつある。日本のOEMは独自の品質基準を持っている場合が多いが、海外サプライヤーの中にはOEM独自の品質基準の受け入れに難色を示す一方、Automotive SPICEに基づいた要求事項については容易に受け入れるケースも見られる。

当社においても、日本のOEMの依頼で海外サプライヤーに対するAutomotive SPICEのプロセスアセスメントを実施し、プロセス改善を支援するケースがあるが、OEMから共通して聞かれる声として、従来は見えにくかったサプライヤーの開発現場における問題の原因がAutomotive SPICEのアセスメントによって見えるようになったというものである。