5. OEMにおける活用
そして、欧州のOEMはAutomotive SPICEの能力レベル2もしくは3の達成をサプライヤーに対する要求事項として掲げ、サプライヤーの開発プロセスの改善を強く促してきたのである。その結果として、特に欧州のOEMとのビジネスを続けるサプライヤーにおいては、Automotive SPICEに基づくプロセス改善が広く定着している。
本項では、日本のOEMの視点でAutomotive SPICEの活用を探る。
従来、日本のOEM-サプライヤー間における開発のアプローチと、欧州のそれは大きく異なっていた。日本のOEMとサプライヤーの間には、詳細な要求仕様書の受け渡しがなかったとしても、完成形のイメージを繰り返し議論したり、OEMから要求されていなかったとしてもより良い機能をサプライヤーが実現したりすることで開発を進めてきた。長い付き合いの中から生まれた“すり合わせ”と“忖度”によるものづくりである。
しかし、この方法は日本以外のサプライヤーとの間では通用しない。要求を明確にするための議論は行われるものの、当然ながら要求していないものは実現されない。
ADASや自動運転など、従来の車両に搭載されていなかった新たな機能が増える中、日本のOEMにおいても新たな海外サプライヤーとのビジネスが増えていっており、海外サプライヤーとの付き合い方が課題になっているケースが増えている。
そのような状況の中、日本のOEMの中でも海外サプライヤーとのビジネスにおいてAutomotive SPICEを活用する動きが本格化しつつある。日本のOEMは独自の品質基準を持っている場合が多いが、海外サプライヤーの中にはOEM独自の品質基準の受け入れに難色を示す一方、Automotive SPICEに基づいた要求事項については容易に受け入れるケースも見られる。
当社においても、日本のOEMの依頼で海外サプライヤーに対するAutomotive SPICEのプロセスアセスメントを実施し、プロセス改善を支援するケースがあるが、OEMから共通して聞かれる声として、従来は見えにくかったサプライヤーの開発現場における問題の原因がAutomotive SPICEのアセスメントによって見えるようになったというものである。