9. レビュー
英語のReviewという言葉は、しばしば狭い意味で解釈されてしまうことがあるが、これは会議体などの具体的な手法だけを指しているのではなく、確認行為を広く指しており、intacsの公式テキストの中でも“英語を母国語としない方のために”ということで補足が記載されている。
このReviewが指す広い確認行為の中には、ウォークスルーやインスペクションのような手法に留まらず、監査、解析、テストといったあらゆる視点からの確認行為が含まれる。
Automotive SPICEでは、これらの確認行為が各プロセスの基本プラクティス(能力レベル1)の中のシチュエーションに合わせてEvaluate(評価する)、Verify(検証する)、Ensure(保証する)という用語で表現されている。
[Evaluate]
この用語は、技術的な正確性の確認ではなく、狙い通りの特性であることを確認する場合に用いられる。
たとえば、今後のシリーズ化を狙った製品のアーキテクチャにおいて直近のリリースだけに特化したインターフェースの作りこみになっていた場合、技術的には誤りでなかったとしてもシリーズ化という狙いに対しては適切ではないということになるが、このような狙いの確認はEvaluate(評価)として実施される。
- ACQ.15、SPL.1、MAN.3、MAN.6、PIM.3、REU.2、およびエンジニアリングプロセス
[Verify]
この用語は、技術的な正確性を裏付ける確認行為を指す。技術的な正確性を裏付けるためには、その基準としてVerification Criteria(検証基準)が必要となる。
たとえば、ソフトウェアユニットに対する動的検証(ユニットテスト)における検証基準には、テスト仕様、テストケース、テストデータ、テストカバレッジの目標値などが含まれ、静的検証(静的解析、コードレビュー)における検証基準には、コーディング標準、コーディングガイドラインなどが含まれ、それぞれ検証基準に対して逸脱がないことが確認される。
なお、Automotive SPICE V3.0以降は、検証系を除くエンジニアリングプロセスにおいて、Verifyに関する基本プラクティスが削除されている。これは、Verifyが不要になったという意味ではなく、GP 2.2.4およびSUP.2の位置づけの中に再整理された結果である。
- SUP.2、SUP.8、および検証系エンジニアリングプロセス
[Review]
この用語は、仕組み(人の活動や組織の決まりも含む)に基づいて確かなものにするということを指す。
たとえば、エンジニアリング系プロセスを中心に広く定義されている一貫性に対するEnsureは、確立された双方向トレーサビリティの仕組みの上に成り立つ。
なお、一部のプロセスにおいてはEnsureではなくAssureが用いられている。Ensureは、仕組みに基づいて確かなものにするということを指すのに対し、Assureは人が責任を持って確かなものにするということを指している。
- ACQ.11、ACQ.11、ACQ.12、SPL.1、SPL.2、SUP.1、SUP.4、SUP.8、SUP.9、
SUP.10、MAN.3、REU.2、およびエンジニアリングプロセス
[Review]
基本プラクティスの中にはReviewという用語を直接的に用いているものもある。これらは、上記のそれぞれの観点を含む体系的な確認として用いられている。
- ACQ.3、ACQ.4、SUP.4、SUP.7、SUP.10、MAN.3