航空関係

最終更新日: 2025.06.24

1. はじめに

新技術による新たな航空機とプレーヤーの台頭

近年、電動航空機や空飛ぶクルマ(eVTOL)のように、従来のガスタービンエンジンを超えた新しい技術コンセプトが航空分野で注目を集めています。これに伴い、これまで大型旅客機や軍用機に限定されていた航空市場に、異業種やベンチャー企業といった新たなプレーヤーが相次いで参入しはじめました。たとえば自動車業界で培われたEV技術やソフトウェア開発ノウハウが、航空機の電動化や自律制御分野に適用されるなど、自動車と航空の“技術融合”が現実的になりつつあります。さらに、IT分野のスタートアップも情報通信技術やAI技術などを通じて、ドローンや小型機の運航サービス開発に取り組んでいます。防衛や宇宙産業で得た高信頼性設計や厳格な品質管理を活かして、民間向けに製品を展開する動きも加速しています。こうした技術革新と多様化によって、従来の枠組みでは想定されなかったスピード感と新しいビジネスモデルが生まれています。

一方、新しいプレーヤーたちが開発した機体を実際に商業利用するためには、厳格な認証プロセスを乗り越える必要があります。一般に機体メーカーは、機体の型式証明(Type Certification)において認証済みの装備品を実装することで、検査の一部を省略できる利点があるため、搭載する装備品の認証を要求することが多いです。この要求を受けて、装備品メーカーは、装備品開発において、ARP4754B(システム)、ARP4764A(安全分析)、DO-178C(ソフトウェア)、DO-254(ハードウェア)といった規格を順守し、膨大なドキュメントと試験結果を当局に示さなければなりません。さらに量産・運用段階では、品質保証規格のAS/EN9100や各国の型式証明を取得することが不可欠です。こうした認証業務は、自動車業界のISO 26262やAutomotive SPICEなどとは類似点がある一方、航空特有の厳密な安全基準や追加試験項目が存在します。

認証要件への対応は、各プレーヤーが市場へ製品を投入する上で避けて通れないステップです。だからこそ型式証明に精通したコンサルタントや開発プロセス全般をサポートする組織との連携が、競争力を左右する重要な鍵といえます。

民間航空機システム開発で直面する課題と対応策

新技術や新しいプレーヤーが航空分野に参入しやすくなったとはいえ、開発の複雑性と認証の厳格さは依然として高いハードルです。たとえば車載システム開発で培ったドキュメントを転用したとしても、航空機向けにドキュメントを再構築するには大幅な時間とリソースを要します。開発ドキュメントを整備する文化がないベンチャーにとっては、試作機のフライト試験や膨大な書類の準備が大きな負担になります。防衛・宇宙の分野から移行する場合も、規格の読み替えや運用方針の差異が想定以上に手間となることがあります。ここで新規参入時の代表的な課題は次のとおりです。

  • 品質マネジメントの強化
    設計から試験、量産までを一貫した管理ができるプロセスの整備やドキュメント管理ツールの導入
  • 試験インフラとスケジュール調整
    飛行試験や構造強度試験には特殊設備や立会い審査が必要で、初期計画段階からプロジェクト全体の工程を見通すことが重要
  • 専門人材と外部リソースの活用
    認証に精通したエンジニアやコンサルタントと早期に連携し、要件や法規のギャップを素早く埋める

こうした課題への対応が早ければ早いほど、新規参入企業は認証プロセスをスムーズに進められ、製品化のスピードを高められます。自動車・自動車以外・防衛・宇宙など多様な背景をもつ企業の強みを生かしながら、航空特有の認証規格と品質要求に的確に対応することが求められます。最終的には安全と信頼性を担保するプロセスの構築がゴールとなり、これに成功すれば新規参入の壁を乗り越えられる可能性が高まります。

2. 型式認証について

航空機開発から運航までの流れ

民間航空機の開発はシステム設計から始まり、試験や認証手続を経て、最終的には運航(航空会社による使用)に至るまで一貫したプロセスを踏む必要があります。自動車、自動車以外、防衛・宇宙など、異業種から参入する方にとっては、以下の点を押さえることが重要です。

  1. 概念設計と要件定義
    航空機特有の安全性・信頼性要件を満たすために、航空当局(国土交通省、米国のFAA(Federal Aviation Administration)、欧州のEASA(European Union Aviation Safety Agency)など)の基準を踏まえた要求仕様を策定します。自動車開発のノウハウを活かす場合でも、機体構造や運航環境が大きく異なるため、初期段階で航空規格に沿った要件設定が必要となります。
  2. 詳細設計と各種試験
    構造設計・制御系設計を行い、シミュレーションや地上試験を重ねます。基本設計の一部である構造設計では、空力設計と機体形状を決定し、主要構造の設計を行います。エンジン選定と推進系統の設計と合わせて制御系設計を行い、シミュレーションによる性能予測を行います。詳細設計では、ARP4754B(システム)、ARP4761A(安全性解析)、DO-178C(ソフトウェア)、DO-254B(ハードウェア)など、航空業界に特有のガイドラインが適用されます。
  3. 試験飛行と運航準備
    実機での飛行試験を通じ、安全性・性能面の最終検証を行います。各種認証を取得後、航空会社や運用者による運航段階に入ります。運航データ分析による改善、改善に伴うソフトウェア更新、部品供給と保守サポートなど、その後の整備・改修プロセスも含めてライフサイクル全体で安全性を維持します。

型式証明(Type Certification)の流れ

型式証明は、開発した航空機が航空当局の安全基準を満たすことを正式に確認するために不可欠な手続きです。自動車業界やベンチャー企業など、新規参入を検討する方々にとっては、以下の流れを理解することが大切です。主な手順は以下の通りです:

  1. 設計基準の選定と申請
    適用される耐空性基準(例:FAR/JAR/EASA CS)を確認し、関連航空当局に申請を行います。
  2. 設計データの提出
    図面、計算書、試験結果、解析結果など航空機設計の詳細資料を当局に提出します。
  3. 認証計画の策定
    どのように基準適合性を証明するかを示す計画書を作成します。
  4. 解析と試験
    構造解析、風洞試験、地上試験、飛行試験などさまざまな試験を実施し、安全基準を満たしていることを実証します。
  5. 検査と審査
    航空当局による設計、製造工程、品質管理システムの検査と審査があります。
  6. 飛行試験
    プロトタイプ機を使用した実際の飛行試験を行います。
  7. 適合性証明書類の作成
    すべてのテスト結果と証明書類をまとめ、提出します。
  8. 型式証明の発行
    すべての基準が満たされていると認められれば、航空当局から型式証明書が発行されます。

各国の航空当局(日本の場合は国土交通省航空局、米国ではFAA、欧州ではEASA)によって詳細な要件や手続きが異なる場合があります。また、航空機の種類(大型旅客機、小型機、ヘリコプターなど)によっても要件が変わります。型式証明取得は一般的に数年を要する長期的なプロジェクトであり、専門的な知識と多額の費用が必要です。

プロセス専門家の視点から見た課題

実際に開発・認証を進めるうえでは、以下のような課題が存在します。特に新規参入を考える場合、早期に対策を講じることが成功のカギです。

  • ドキュメント管理や各種証拠の整備
    大量の設計資料や試験報告書を、一貫性を保ちつつ正確に管理する必要があります。バージョン管理とレビュー体制を強化し、変更点を追跡できる仕組みを整備することが求められます。
  • プロセス構築と品質保証
    ISO 9001やAS/EN 9100などの品質マネジメントシステムに加え、航空業界固有のスタンダードを導入する際には、既存の開発プロセスとの整合を考慮しつつ、最適化を図る必要があります。
  • SMS(Safety Management System)の導入
    航空機の安全性を継続的に確保するうえで、SMSは重要な役割を果たします。安全リスクを組織的に管理し、問題発生時に迅速な意思決定ができる体制を構築することが必須です。
  • 専門知識を持つ人材と外部連携
    型式認証や国際規格に精通したエンジニアの確保が難しいため、外部のコンサルタントやアウトソースを活用した共同開発による体制強化が求められます。

異業種からの参入や新規事業への展開にあたっては、これらの課題を総合的に解決できるパートナーの存在が大きな支えとなります。組織で蓄積した開発手法や強みを活かしつつ、航空独自の認証プロセスと安全要求を理解したうえで取り組むことが、成功への近道となるでしょう。

3. 民間航空機システム開発で遵守すべきガイドラインの概要

本節では、民間航空機システム開発において、順守すべきガイドラインの概要を解説します。また、自動車業界から参入する視点で、車載システム開発に適用されている規格・標準との差異や類似点も示します。システム開発の全体像を「V字モデル」の観点から図示し、開発プロセスの各ステップで必要となるガイドラインを概観していきます。

  • システム全体のV字モデル
    • システム開発計画(認証計画を含む)
    • システム要求開発
    • システムアーキテクチャ設計
    • 詳細開発(ハードウェア開発、ソフトウェア開発)
    • システム検証
    • 要求の妥当性確認

これらの段階を管理する際に、各種ガイドラインで示される要求事項を満たしながら文書化・トレーサビリティを確保し、さらに安全性やセキュリティを保証していくことが重要です。

3-1. ARP4754B(システム開発)

ARP4754Bは、航空業界におけるシステム開発全般を定義する推奨ガイドラインです。運用コンセプトや上位要求を起点に、システム要求開発、システムアーキテクチャ設計、ハードウェア・ソフトウェアへの要件割り当て、統合・検証までのプロセスをV字モデルに従って体系的に示しています。

  • 特徴
    • システム開発の全プロセスで満たすべき目的(オブジェクティブ)の定義
    • トレーサビリティとドキュメンテーションを重視
    • 安全分析(ARP4761A)やソフトウェア開発(DO-178C)など関連ガイドラインとの連携

車載システム開発(Automotive SPICE)との類似性

自動車業界の開発現場ではAutomotive SPICEが利用され、要求抽出(SYS.1)、システム要求分析(SYS.2)、システムアーキテクチャ設計(SYS.3)、システム統合および統合検証(SYS.4)、システム検証(SYS.5)といったプロセスが定義されています。

  • ARP4754BとAutomotive SPICEの共通点
    • 要求管理 → 設計 → 統合 → 検証というV字モデルを踏襲
    • 安全規格(ARP4761AやISO 26262等)との連携
    • HW開発、SW開発とのつながり

航空と自動車では用語や内容の粒度、プロセスの建て付け等に違いはありますが、「高い安全性を確保するためには開発プロセスが重要」という思想は共通しています。

3-2. ARP4761A(安全分析)

ARP4761Aは、航空機システムの安全分析(Safety Assessment)にフォーカスしたガイドラインです。FHA(機能的危険要素の分析)でハザードを特定し、PSSA(予備的システム安全評価)、SSA(システム安全評価)などのプロセスを通じて開発保証レベル(DAL)を割り当てることで必要な安全対策を決定します。

  • 主な手法
    • FHA(Functional Hazard Assessment): 潜在的な危険事象とその影響度の洗い出し
    • PSSA(Preliminary System Safety Assessment): アーキテクチャ段階で安全要求と低減策を検討
    • SSA(System Safety Assessment): 実装後に安全目標が達成されているか検証(故障モードや共通原因解析なども含む)
  • 開発保証レベル(DAL)
    • DAL A(壊滅的(Catastrophic))~DAL E(軽微(Minor))
    • DALが高い重大な機能にはより厳しい検証、独立性のあるレビュー、成果物の管理を適用

自動車業界のISO 26262との比較

自動車向け機能安全規格ISO 26262でも、コンセプトフェーズでハザード分析・リスクアセスメント(HARA)を行い、ASIL(A~D)を安全要求に割り当てます。

  • ARP4761AとISO 26262の共通点
    • 危険事象の洗い出し → 安全要求の導出 → システム設計へのフィードバックの流れ
    • FMEAやFTAなどの故障解析手法
    • リスクレベルに応じたプロセスの厳格さ

DALとASILは厳密には1対1対応ではありませんが、「リスクに応じた段階的な安全対策」という概念は共通しています。

3-3. DO-178C(ソフトウェア開発)

DO-178Cは、航空機に搭載されるソフトウェア開発のための事実上の標準ガイドラインです。ソフトウェア開発プロセス全体を「計画、要求定義、設計、コーディング、統合、検証、認証の調整」に分け、各プロセスで満たすべき目的(オブジェクティブ)と成果物が示されています。主要な活動は次のとおりです。

  • 開発計画の策定
    • ソフトウェア開発計画、検証計画、形態管理(構成管理)計画、品質保証計画などを作成し、手順や基準を明確化
  • 要求・設計・実装
    • 要求を高レベル要求(HLR)と低レベル要求(LLR)に分割
    • トレーサビリティ(要求⇔設計⇔コード⇔テスト)の確保
  • 検証(Testing, Review, Analysis)
    • DALに応じてカバレッジ基準や独立性(独立検証チームの設置)を厳格化
    • 構成管理・変更管理の徹底

車載ソフトウェア開発(ISO 26262 Part 6、Automotive SPICE SWE.1~6)との共通点

  • ISO 26262 Part 6
    • ソフトウェア開発のV字モデルが定義
    • モデルベース開発やオブジェクト指向開発にも対応
    • ASIL Dレベルでは厳密な検証やレビューの独立性が必要
  • Automotive SPICEのSWEプロセス
    • SWE.1(SW要求分析)→ SWE.2(ソフトウェアアーキテクチャ設計)→ SWE.3(詳細設計・コーディング)→ SWE.4(単体テスト)→ SWE.5(ソフトウェア統合検証)→ SWE.6(ソフトウェア検証)という流れ
    • 能力レベル2以上(管理されたプロセス)を達成すると、DO-178Cに類する文書管理や検証プロセスを十分整備した状態となる

航空のDAL Aソフトウェアは、自動車のASIL D相当の厳格さとイメージが近く、両業界の高信頼ソフトウェア開発は多くのベストプラクティスを共有できます。

3-4. DO-254B(ハードウェア開発)

DO-254は、航空機に搭載される電子ハードウェア(FPGA、ASIC、回路基板など)の開発ガイドラインです。ハードウェア開発でもソフトウェア同様に開発保証レベル(DAL)を割り当て、要求定義から設計、実装、検証までのプロセスを詳細に規定します。

  • ハードウェア開発プロセス
    • 要求定義 → コンセプト設計 → 詳細設計 → 実装(論理合成、基板レイアウト) → 検証(レビュー、シミュレーション、実機試験など)
    • トレーサビリティの確保、構成管理の徹底
  • DALの区分
    • 重大度に応じてA(最も厳格)~Eまでの開発保証を要求

車載ハードウェア開発との類似性

  • ISO 26262 Part 5
    • ハードウェア安全要求の導出、耐故障設計など
  • Automotive SPICE 4.0のHWEプロセス
    • HWE.1(HW要求分析)→ HWE.2(HW設計)→ HWE.3(HW設計の検証)→ HWE.4(HW要求の検証)
    • ハードウェアサンプル作製は対象外であるが、サンプルを作成するためのデータ生成は含まれる。
    • ハードウェア開発にもV字プロセスを適用し、品質と安全を保証

航空でのハードウェア品質保証の手法(DO-254B)は、FPGAやASICのような複雑なハードウェアに適用されます。複雑度が低いアナログ回路やディジタル回路に対する厳格な規格が存在しないため、DO-254Bを適用するか、適切な他プロセス(例えば、Automotive SPICE 4.0 HWEプロセス)を適用します。

3-5. DO-326A(サイバーセキュリティエンジニアリング)

DO-326Aは、航空機や関連システムのサイバーセキュリティ対策をライフサイクル全体で実施するためのガイドラインです。脅威分析(TARA: Threat Assessment & Risk Analysis)によるリスク評価や、セキュリティ要求定義、セキュリティ検証、運用監視などがプロセスとして定義されています。

  • 主な活動
    • 脅威・リスクの識別と評価
    • セキュリティ要求の策定
    • セキュリティ検証(脆弱性評価、ペネトレーションテストなど)
    • 運用時のインシデント対応策の準備

車載サイバーセキュリティ(ISO/SAE 21434、Automotive SPICE for CS)との共通点

  • ISO/SAE 21434
    • 自動車のライフサイクルを通じたサイバーセキュリティ要求を定義
    • 予防的アプローチと継続的監視の重要性
  • Automotive SPICE for CS
    • Automotive SPICEにセキュリティエンジニアリング活動を追加
    • SEC.1~4などセキュリティ要求抽出、サイバーセキュリティ実装、リスク処置の検証と妥当性確認、サイバーセキュリティリスク管理といったプロセスを設定

航空と車載で脅威シナリオは異なりますが、「開発の早期段階からセキュリティ要求を組み込み、継続的にリスクを管理する」という考え方は共通し、今後ますます重要度が高まる分野です。

3-6. 他の補足ガイドライン(DO-330、DO-331)

1.DO-330(ソフトウェアツール認定の考慮点)

  • 概要
    • 開発支援ツール(要求管理ツール、自動コード生成ツール、テスト自動化ツールなど)の信頼性を確保するためのガイドライン
    • ツールによる不具合が製品に影響しないよう、ツール認定手順を定義
  • ISO 26262との関係性
    • ISO 26262-8で定義されるTCL(ツール信頼レベル)の考え方と同様
    • 安全上重要なツールほど、より厳格な検証や説明資料が必要

2. DO-331(モデルベース開発)の概要

  • ソフトウェア開発(DO-178C)におけるモデルベース開発適用の考慮点
    • Simulink等のモデルを使用し自動コード生成する際の追加要求
    • モデルレビュー、モデルシミュレーション、モデルとコードの一貫性確認
    • コード生成ツールの認定(DO-330との連携)
  • 自動車業界との類似性
    • モデルベース開発における品質保証やツール認定(TCL)などの考え方はほぼ共通

DO-330、DO-331はいずれも「ツールやモデルを活用する際の安全性・信頼性をいかに担保するか」を示した補足ガイドラインであり、自動車分野でも同様の課題がISO 26262やAutomotive SPICEなどで扱われています。

以上のガイドラインを活用することで、航空機のシステム開発では高い安全性と品質を確保し、認証当局の要求にも応えられる体制を整えられます。自動車分野等から参入される場合、すでに持っているAutomotive SPICEやISO 26262の知見と対比させながら学ぶと理解が深まり、かつ迅速にプロセスを最適化できるでしょう。防衛・宇宙分野からの参入においても、従来の品質保証体制を土台としてARP4754Bなどの要求を付加していくことで、民間航空機向けの認証支援や開発プロセス構築を円滑に進めることができます。

4. 最新動向

航空機搭載システム開発のガイドラインの更新情報、一般社団法人 航空イノベーション推進協議会(AIDA)、およびその研究会の一つである航空機装備品認証技術コンソーシアム(Certification Technology Consortium for Aircraft System:CerTCAS)の活動成果を随時紹介します。

5. 車載システムと民間航空機システム開発における知見の相互活用

5-1.当社が提供する価値

(1) 自動車業界で培った専門家の知見を活用

当社は、車載システム開発の現場で長年培ったプロセス構築や実装のノウハウを活かし、航空システム開発に適用されるさまざまな規格やガイドラインに対応した効率的な開発体制づくりをサポートいたします。具体的には、以下の点が強みです。

  • Automotive SPICEに基づくプロセス構築の経験
    自動車業界で広く採用されているAutomotive SPICEに準拠したプロセス実装の勘所を、民間航空機システム開発へ応用するノウハウを有しています。ソフトウェア開発から組込みシステムまで幅広く対応します。
  • ISO 26262(機能安全)やISO 21434(サイバーセキュリティ)の経験
    車載開発の安全要求やセキュリティ要求に対して、開発現場の特性に適した標準プロセスをどのように定義・実装・運用すればよいかを熟知しています。例えば、車載システムとの共通性を特定しながら、民間航空機システム開発においても必要な安全計画、安全設計、セキュリティ分析と方策の実装、システム検証に対して、流用できる実装手段を適用します。

(2) 民間航空機システム開発の支援経験を活用

当社は、民間航空機システムのガイドラインに準拠したプロセス構築やソフトウェア開発支援の経験を多数持っています。これらの経験を民間航空機システム開発および車載システム開発で認証が必要なプロジェクトに活用します。具体的には以下の点が強みです。

  • ソフトウェア開発プロジェクトのDO-178認証支援経験の活用
    DO-178の要求事項に準拠し、認証取得するための開発計画、開発プロセス、検証と妥当性確認プロセスを適切なツールを活用しながら認証取得までを支援してきました。認証で求められる文書化やトレーサビリティの管理、テスト戦略などのノウハウを認証取得が必要なプロジェクトに活用します。
  • 民間航空機システム開発と車載システム開発共通のノウハウの活用
    車載システムに対して、航空機システム開発において先行していたモデルベース開発手法、ツール認定方法、コンパイラ検証手法の実装ノウハウを自動車機能安全(ISO 26262)対応に活用します。

5-2.当社が提供するサービス

(1) 航空機開発ガイドライン対応への具体的なアプローチの理解

民間航空機システム開発におけるガイドラインに場当たり的に対応すると複雑になりがちです。何をするのか、その事例は示されていますが、そのまま利用すると関係者が読んでも理解が難しく、実際の開発活動とのギャップが生まれます。当社では、どのようにプロセスを定義すれば自社の開発現場にフィットするかを一緒に議論し、具体的なアプローチを導き出すお手伝いをします。

  • トレーニングによる基礎知識の獲得
    ARP4754やDO-178など民間航空機の開発ガイドラインを初めて学ぶ方にも、分かりやすく解説します。
  • 実装ワークショップ
    車載システム開発に適用されている規格(Automotive SPICE、ISO 26262など)を活用するポイントを示し、開発プロセスのどこに手を加えればよいか、具体的なタスクや文書化方法などを、ディスカッションを通じて解決策を洗い出します。

(2) 開発現場でのプロセス構築・実行支援

プロセス構築や実行支援がスムーズに進むよう、経験豊富なコンサルタントが伴走型で関係者の方の納得感に重きを置いた支援を行います。

  • コンサルティングサービス
    既存プロセスの見直しや、新規開発プロセスの定義、プロセスに実装する手法など、車載開発での成功事例をもとに、航空業界でも通用するベストプラクティスを提案します。
  • 実装・運用フェーズの課題解決支援
    プロセス策定後の運用段階で発生することが多い課題(ドキュメント整合性、変更管理、テスト戦略など)に対しても、具体的な解決策を提供します。必要に応じて現場でのワークショップやレビュー会を開催し、プロセスの定着をサポートします。

(3) 認証支援・仕組み作り・人材提供

民間航空機システム開発では、認証取得に向けた膨大な文書や要件整理、試験エビデンスの管理などが必要です。当社はPMOや通訳サービスも含め、包括的に支援可能です。

  • 認証取得に必要なドキュメント整備・管理支援
    ガイドラインの要求事項に合わせた文書テンプレートの提供、審査当局への提出資料の作成支援などを行います。これによりプロジェクトのリスクを低減し、スケジュール通りの認証取得を目指します。
  • PMO(Project Management Office)支援
    プロジェクト全体の進捗管理、課題管理、リソース調整などを専門チームが担います。大型プロジェクトから小規模チームでの開発まで柔軟に対応し、効率的なプロジェクト運営を支えます。
  • 通訳サービス
    海外拠点や海外の認証当局とのコミュニケーションを円滑にするため、技術用語に精通した通訳者が、英語での会議や交渉をサポートします。

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