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2018年12月号 欧州自動車業界におけるアジャイル開発の動向(南保)

11⽉14〜15⽇にドイツシュトゥットガルトにて、Agile in Automotive 2018(⾃動⾞向けアジャイル開発のカンファレンス)が開催されました。今年は4回⽬の開催となり、欧州のみならずアジア圏からの参加者も増えてきました。これまでは、アジャイル開発はソフトウェア開発に適合できるが、ハードウェアも含めた開発には適さないと⾔われ、なかなか普及が進みませんでしたが、今年は状況に変化が⾒られました。

まず、VDA-QMCのワーキンググループ<Agile Collaboration>が設⽴されました。このワーキンググループは、アジャイル開発を実施すべき状況として5つのユースケースを挙げ、協⼒(コラボレーション)体制における役割と責任や、3段階のコラボレーションレベルを定義しました。今後は、この内容を基にアジャイル開発におけるコラボレーションのためのルールやプロセスを定義し、2019年末〜2020春に「Blueprint」という形式(拘束⼒のない推奨)でアジャイル対応の⼿引きが公開される予定です。このワーキンググループは、VDA-QMCに加盟しているドイツの主要なOEMとTier1を中⼼とした12社で構成されております。⾃動⾞業界をとりまく環境が⼤きく変化し、新たなビジネスモデルが誕⽣しつつある中で、OEMとサプライヤーは今まで以上の協⼒体制を築き、変化に対応していくためにも、このBlueprintの実装が推奨される⾒込みです。

また、カンファレンスの発表において、Volvo Carsの講演者により、SAFe®(Scaled Agile Framework<⼤規模アジャイル開発フレームワーク>:ポートフォリオレベル、プログラムレベル、チームレベルでの意思決定及び実⾏。スクラム、カンバンシステム、複数のバックログによる企画の審査と開発の連携)を組織レベルで実装すると決定し、展開を開始したことに関する発表がありました。BMW Groupの講演者においては、LeSS(Large-Scale Scrum<⼤規模スクラム>:複数のチームにスクラムを適⽤し、そのチームメンバーが1つの製品に焦点を当てて取り組む枠組み)を使⽤して⾃動運転機能の開発を実施した事例に関する発表がありました。

⼀部の欧州OEMは、サプライヤーに対してアジャイル開発の実装を要求事項に加え始めています。各OEMにおいて、アジャイル開発の実装状況は現時点でばらつきがありますが、市場への製品投⼊までの期間を短縮させ、ダイナミックな市場に対応するためには、敏速な(agility)活動が不可⽋であるという認識は共通です。

アジャイル開発を実装するためには、従来型の役割と責任を変更し、開発メンバーの意識を変えていく必要性や、ツール環境(例:継続的インテグレーション(CI)に対応するためのテスト環境)の整備が不可⽋です。そのため、アジャイル開発の展開には⼀定の時間を要します。

2018年2⽉に VDA Automotive SPICE ガイドラインが出版され、アジャイル実装プロジェクトに対するアセスメントのルール・推奨事項が規定されました。当社においてもアジャイル対応プロジェクトへのアセスメントの実施や、サポートに関する相談やお問い合わせが増えてきています。これらを考慮した新たなサービスやトレーニングも企画しておりますので、今後のメールマガジンにて随時ご紹介していきます。

2018/12/5  南保 あかね