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プロセスモデリング手法:皆さんはプロセスをどのように定義していますか?(日吉)

アセスメントをしていると、「プロセスが無いんです」という声を聞くことがあります。何らかの作業をしいて、その出力がある限り、そこにプロセスは存在しています。プロセスが文書化されていないだけなのです。今回は、プロセスの文書化手法に関する話をお届けいたします。ここに紹介する手法を活用することで、Automotive SPICE – PA3.1/PA3.2やIATF 16949 – 4.4 Quality management system and its processes の要件を満たすプロセス定義が可能となりますので、是非ご一読ください。

まず、プロセスとはどういうものかを考えてみましょう。日常的に使っている言葉ですが、改めて問いかけられると意外と答えに詰まりませんか?ISO/IEC 12207では、「互いに関連をもった活動の集合で、入力を出力に変換するもの」と定義されています。活動には、作業にたずさわる「人」、使用する「道具や技術」および作業「手順」が関係してきます。これらの要素を上手く文書化できれば、立派なプロセス文書に仕上がるはずです。Automotive SPICEやCMMIなどのプロセス改善モデルでは、組織標準プロセスは、このような要素が体系的に定義されて文書化されていることを想定しています。

プロセスの文書化手法として、活動を1つのオブジェクトとしてとらえて表現していくプロセスモデリング手法をご紹介します。この手法では、1つのオブジェクトの中にプロセス定義に必要な要素を記述していきます。これは、ETVX形式の記述法といい、入力を出力に変えるための手順、人、道具が表現可能となります。この手法のメリットは、オブジェクトをつなぎ合わせることで、プロジェクト目標にあった一連のプロセスとして仕上ることができる点です。またオブジェクト単位に実績を計測することで、活動状況を評価、分析することが可能となり、定量的な実績値を元にしたプロセス改善にもつなげることができます。

プロセスをオブジェクトとしてとらえる考え方は、UMLと親和性があります。OMG(Object Management Group)というコンソーシアムがUMLのモデリング技法を活用してプロセスを定義するための概念であるSPEM2.0(Software & Systems Process Engineering Meta-Model Specification)を提供しています。このSPEM2.0、身近なところではAUTOSAR のテクニカルドキュメントもこの概念に準拠して作成されていますので、時間のある時に読んでいただけると参考になると思います。

私たちは、EPF Composerというツールを使ってプロセスを文書化しています。これは、Eclipse Process FrameworkというEclipseのプラグインでECLIPS FOUNDATIONから無償で提供されています。ツールを使ってプロセスを構築すると、コンテンツの再利用やテーラリングがし易くなりますのでお勧めいたします。弊社ではプロセス構築のお手伝いもしておりますので、お困りの際は、お気軽にご相談ください。

2019/3/28  日吉 昭彦