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Automotive SPICEガイドラインの重要性(田渕)

2017年末にAutomotive SPICEガイドライン(通称:Blue-Goldブック)がリリースされ、すでに2年が経過いたしました。2018年11月号のメルマガでは、本ガイドラインをプロセス改善に活用するヒントについてご紹介しましたが、最近では海外のOEM、サプライヤーからのプロセス改善要求の中に、ガイドラインの参照が含まれるケースが多く見受けられるようになりました。今回のメルマガは、その辺りのトレンドの背景についてご紹介いたします。

海外、特に欧州の多くの企業では、開発委託先に対するプロセス改善の規定を設け、これを開発委託先との契約に盛り込むことで、開発委託先のプロセス改善を確実に遂行してもらうことを狙っています。こういった規定には、以前はプロセス改善の成果を確認する手段としてAutomotive SPICEのアセスメント対象プロセスと目標能力レベルのみが定義されることが多かったのですが、目標能力レベルの達成とプロジェクトの成功が直結しないケースが多かったことも事実です。

Automotive SPICEにはいわゆる「What」が定義されているものの、開発プロジェクトにて実施される具体的な手法など「How」は定義されていないため、その「適切さ」はアセッサーの判断に委ねられることとなります。「適切さ」の判断を誤れば、前述のような目標能力レベルの達成とプロジェクトの成功が直結しないケースが発生してしまいます。このような課題が散見されていたこともあり、アセッサーによる違いを抑える目的で冒頭のガイドラインが発行されました。

ガイドラインには、前述の「How」に該当する内容も記載されています。たとえば、ガイドラインにはプロジェクトメンバーの日々のタスクの粒度(期間)に関する記載があります。一般的に、タスクの期間が長すぎると、日々のステータスを把握しにくかったり、得られた工数実績を後のプロジェクトの工数見積に活用しにくくなるなどの弊害がありますが、ガイドラインで個々のタスクの期間は1週間を超える長さにしてはならないということが記載されています。

話を開発委託元の規定に戻しますと、最近ではガイドラインを参照することで、先の例の1週間といった具体的な基準が規定に盛り込まれ、Automotive SPICEのアセスメントの有無に関わらず、その遵守を求めるケースが増えてきました。その狙いは、プロジェクトの成功に直結しやすいプラクティスの実施を直接的に要求したいということにあります。

そのような規定を用いる企業の中には、アセスメントにおいてAutomotive SPICEの指標よりも自社の規定に基づいた実装結果を重視するケースも見受けられます。これは、必ずしもAutomotive SPICEの正規のアセスメント方法ではありませんが、開発委託元が開発委託先のプロジェクト運営に対する要求事項として掲げている限り、ビジネス上はそれに従わなければならないという状況があります。

実は、元々Automotive SPICEガイドラインが策定される際に、一部のOEMの社内規定(開発委託先への要求)が引用される形で取り入れられたものも存在しており、今後もOEMの新たな要求がデファクトスタンダード化してAutomotive SPICEガイドラインやAutomotive SPICE本体へ反映されていくことになるかと思われます。そのためにも、まずは現行のガイドラインの内容を上記のような背景と照らし合わせて学んでいただくことが重要かと思います。

当社では、Automotive SPICEガイドラインを活用していくためのトレーニングとして、intacs認定 VDA Automotive SPICEガイドライントレーニングを開催しております。ぜひこの機会にご参加をご検討いただければ幸いです。

[トレーニングの主な内容]
・intacsアセッサー新制度
・Automotive SPICEガイドラインにおけるルールと推奨事項
・主要プロセスに対するルールと推奨事項の適⽤⽅法(演習)
・モデルベース開発、アジャイル開発等の開発スタイルに対するルールと推奨事項の適⽤⽅法(演習)
・共通プラクティスの解釈(能⼒レベル2、3)
・評定の⼀貫性(演習)

2020/1/24 ⽥渕 ⼀成
 
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