今回は、3月の「Automotive SPICEにおけるプロセスの解釈について (問題解決管理)」に続いて、プロジェクト管理プロセスにおいてアセスメント時に見かける「リリース計画」に対する弱みについて取り上げていきます。
アセスメント時に「リリース計画を見せてください」との問いかけに対し以下のような行動をした経験はありませんか。
・リリース計画がプロジェクト管理のプロセスで問われることを理解できない(必要性が理解できない)
・リリース計画自体が作成していなかった(何を作成したらいいか理解していない)
・顧客が作成した大日程をそのまま提示する
Automotive SPICEの中でリリース計画については、SYS.4、SYS.5、SWE.5、SWE.6などのプロセスにおいてリリース計画との関連が表現されています。
具体的にはサプライヤーは各サンプルにおいて、テストケースを作成する際にテスト対象となるテストケースを選択した根拠を示す必要があります。その根拠としてよく利用されるのがリリース計画となり、その計画に従いテストケースが作成(選定)されていることを保証する必要があります。しかし、計画を作成する理由が理解できていないために、プロジェックト管理で何を作成すべきなのかを理解できていない方がいます。
そこで、リリース計画書の作成について困っている方のために1つの事例をご紹介しておきます。
図1:リリース計画書(SAMPLE)
リリース計画書は、顧客を含む利害関係者と整合を取る文書になりますので作成の際には以下の点に留意して作成することが大切です。
・図1の機能分類欄:計画書作成段階で明確になっている機能についてすべて列挙しておく
・リリースタイミングが確定していないものは備考欄等を使用しその旨を記載しておく
・図1の①のについては、顧客と機能合意をするうえで理解できるレベルの抽象度で機能定義を行う
・図1の②の列については、エンジニアリングプロセスで活用することを前提とした表現を使用する
→この時①と②の表現がかけ離れすぎないように注意する
最終的には組織にあったリリース計画書を定義することが大切ですが、関係者(顧客含)間で合意が必要となる文書となりますので誤解を与えないようにすることが必要です。
また、VDAが発行する“Automotive SPICE ガイドライン“には「リリース計画はプロジェクト管理の一部である。」と記載されておりプロジェクト管理プロセス活動の一部であると述べられています。
リリース計画はプロジェクト管理活動の一環として作成、監視等が行われる必要があります。
弊社では、Automotive SPICEに含まれるプロセスを対象に実施担当者およびプロジェクト管理者を対象にプロセスを中心に必要な活動や作業成果物の観点を習得いただくためのトレーニングを実施しております。また、トレーニングではアセスメントで見かけた事例なども織り交ぜながらお話をさせて頂いております。
詳細につきましてはWEB(https://biz3.co.jp/publictraining_category/automotivespiceengineer)にて案内をさせて頂いておりますので、興味がある方は是非ご受講をご検討頂ければ幸いです。
2023/04/21 齋藤 幸裕