Agile SPICE無償セミナーのご案内

昨年末にお届けした「自動車業界におけるアジャイル導入について」^{i ,ii}と題した前後編のメルマガは、お陰様で多くの方にお読みいただくことができ、国内でもアジャイル導入への関心が高まっていることが再確認できました。そこで、弊社ではAgile SPICE PRM/PAM v1.2日本語版発行のための翻訳作業を進めております。また、昨年のメルマガでもお伝えしたように、Agile SPICEに関するトレーニングの準備も進めております。こちらのトレーニングは今のところ9月からの開催を予定しておりますが、それに先駆け6月5日にAgile SPICE PRM/PAMの一部について、読解やアジャイル開発を導入する際のポイントを紹介する無償セミナーを開催いたします。

ここからは、無償セミナーで予定している内容の一部についてご紹介したいと思います。前回のメルマガでご紹介した通り、Agile SPICE PRM/PAMでは、Automotive SPICEのMAN.3、ACQ.4、SUP.1にそれぞれ相当するAGL.1、AGL.2、AGL.3の3つのプロセスを定義しています。そのうちの1つであるアジャイルワークマネジメント（AGL.1）プロセスでは11の基本プラクティス（BP）が定義されており、プロジェクト管理（MAN.3）プロセスのBPとの関連性が定義されています。マトリクス中のXはAGL.1のBPとMAN.3のBPが直接的に関連付けられていること、（X）はAGL.1のBPがACQ.4 サプライヤー監視のBPのうちのサプライヤーとの開発活動のレビュー（BP3）に間接的に関連付けられていることを表しています。

Agile SPICE RPM/PAMの図2: AGL.1 vs. MAN.3のプロセス座標マッピングより抜粋

この図から、MAN.3.のBP1とAGL.1のBP1が互いに関連していることが分かります。各プロセスのBP1の内容は下記のとおりです。

MAN.3.BP:1 作業範囲の定義
プロジェクトの目標、モチベーション、および境界を識別する。

AGL.1.BP1: 要望および作業境界の識別
利害関係者と緊密に協力し顧客の要望および作業境界を識別する。ビジネスおよび顧客の価値を達成するために、プロダクトのビジョンおよびゴールを導き出す。要望、境界、ならびにプロダクトのビジョンおよびゴールを最新の状態に保つ。

これら2つのBPを比較すると、MAN.3ではあらかじめ要求仕様がある程度決まった製品の開発を管理することを目的としているのに対し、AGL.1では時々刻々と変化する市場環境や利害関係者の要望に追従し、ビジネス価値を提供し続けるため、要望、境界、プロダクトのビジョンおよびゴールを継続的に更新することを目的としていることが読み取れます。

また、Agile SPICEでは各BPに対して備考が記載されていますが、その数はAutomotive SPICEと比べると大変多く、MAN.3の備考が11個なのに対し、AGL.1では64個にもなります。これは、Automotive SPICEでは、内容の解釈とアセスメントの実施結果にばらつきがでないようVDAガイドラインが別途発行されているのに対し、Agile SPICEでは備考がガイドラインの役目を担っているためです。そのため、BPの具体的な期待事項を正しく把握するには備考の理解が必要になります。しかし、これらの備考にはアジャイル開発になじみのない方には理解が難しい用語が多く用いられています。例えば、AGL.1 BP2の備考9「より大きなスコープには、チームのチームが利用され、チームに適したアジャイルをスケーリングするためのアプローチが適用される」を例にとると、「チームのチーム」や「スケーリング」といった用語が該当します。そのため、無償セミナーではそれらの用語に関する説明も行う予定です。

今回のメルマガでは、Agile SPICE無償セミナーで予定している内容として、Automotive SPICEのプロセスと対応関係にあるAGLプロセスの相違点の解釈、およびPRM/PAMを読み解く上での用語の解説についてご紹介しました。これらに加えて、無償セミナーでは今回のメルマガでは触れられなかった自動車製品開発にアジャイル開発を導入するうえでのポイントについてもお伝えする予定です。ご興味を持たれた方はこちらから無償セミナーへのお申し込みをお願いいたします。

2023/5/11 蛸島　昭之

i 自動車業界におけるアジャイル導入について（前半）
https://biz3.co.jp/download/4848
ii 自動車業界におけるアジャイル導入について（後半）
https://biz3.co.jp/download/4872