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Automotive SPICEにおけるプロセスの解釈について
(品質保証プロセスの理解と実践)

 Automotive SPICEに基づくギャップ分析やアセスメントの中では、インタビューを受けている方が回答に困る場面がいろいろとあります。品質保証プロセスであれば、品質目標の妥当性、監査結果の判断の根拠、逸脱を予防する活動など枚挙にいとまがありません。今回はその中で組織の品質マネジメントシステムとAutomotive SPICEが定める品質保証プロセスとの関係についての説明に困り、ご相談を受けた事例を取り上げます。同様のご相談は過去に何度かあり、品質マネジメントシステムの活動と品質保証プロセスの活動の違いを認識されていないことが多いようです。
 今回は品質マネジメントシステムの活動と品質保証プロセスの活動の違い、この両者を交通整理するポイントを考えていきたいと思います。

 ISO 9001とIATF 16949に基づく品質マネジメントシステムの場合、「先行開発」、「試作開発」、「仕様確定」、「量産開発」、「量産」といった粒度のフェーズが定義されているかと思います。各フェーズの最後に設けられた品質ゲートで各フェーズの活動や成果物が確認されます。
 品質保証プロセスでは、フェーズ内のより詳細な活動や成果物を確認します。確認対象はフェーズをより詳細にとらえ、システム、ソフトウェア、ハードウェア、メカ等のドメインに分かれます。さらに各ドメインには要求分析、アーキテクチャ設計、検証といった粒度のプロセスが含まれます。
 このように品質マネジメントシステムと品質保証プロセスでは、確認対象の活動や成果物の粒度が異なります。また確認タイミングも、フェーズ終了時とフェーズの途中段階と異なります。これらの違いを踏まえてどのように交通整理すればよいのかを考えてみましょう。

図 品質保証プロセスの位置づけ

 交通整理は開発の初期段階で考えます。具体的には、品質マネジメントシステムの活動の階層と品質保証プロセスの活動の階層に分けて考えます。同時に顧客のイベントの日程、リリースの日程、品質ゲートの日程、各ドメインの開発日程を考慮して計画すれば、日程のつながりが見えてきます。
 各日程のつながりを意識するメリットとして、品質ゲートでフェーズの活動結果や成果物を確認するときには、フェーズの途中で実施した品質保証プロセスのプロセス監査や成果物監査の結果を活用できます。ある組織の事例では、品質ゲートと品質保証プロセスの間で重複している活動や成果物を整理することで、プロジェクト側の品質ゲートに向けた準備業務と品質ゲートの確認業務の両方を削減できました。

 品質マネジメントシステムとAutomotive SPICEが定める品質保証プロセスの関係の説明に困ったときには、品質マネジメントシステムの活動と品質保証プロセスの活動の違いを意識して、活動やその成果物の交通整理をしていただきたいと思います。
 最後に、Automotive SPICEを読んでも品質保証プロセスの実際の活動や成果物のイメージが難しいと感じられる方は、弊社のプロセス基礎トレーニング(https://biz3.co.jp/publictraining/2407)の受講をご検討いただければ幸いです。今回の事例のように、改善の余地がある開発現場は他にも存在するのではないかと感じます。品質保証プロセスに限らず、機能安全やサイバーセキュリティに関わる活動の交通整理や複数のマネジメント規格への対応方針でお困りの点がございましたら、10月25日開催予定の「A-SPICE V4.0 プロセス習熟ワークショップ ~複数マネジメントシステム統合~」(https://biz3.co.jp/publictraining_category/automotivespiceengineer)の受講をお勧めいたします。

2024/10/17 西門 克郎