AI活用で実現する自走型の品質改善活動~社内アセスメントを変革する支援ツール活用事例~
1.第三者アセスメントと社内アセスメントの役割
製品開発や品質改善を推進するうえで、第三者アセスメントと社内アセスメントをバランスよく組み合わせることは非常に大切です。これまで多くの企業で第三者の立場からプロセス改善のアセスメントを担ってきました。第三者アセスメントの利点として、社内では気づきにくい弱点や改善の余地を客観的に洗い出せる点があります。一方、社内メンバーが実施するアセスメントは、プロジェクトの状況や組織の文脈を踏まえた評価を素早く、しかも柔軟に行えるという大きな利点があります。開発の節目やトラブルが発生した際に即座に状況を把握し、迅速に改善策を講じられる点は、まさに“現場を熟知している”社内アセスメントならではの強みです。
さらに、社内でアセスメントを続けることで、社内メンバーが日常的にプロセスの目的や品質意識を考えるようになるという波及効果も期待できます。第三者・社内それぞれの良さを活かし、両輪で改善活動を回していくことで、組織全体の品質文化をより強固に醸成できるのではないでしょうか。
2.社内アセスメントの高いハードルとAXIOMの意義
アセスメントを行うためには、プロセスアセスメントモデル(PAM)に関する深い理解、インタビュースキル、評価結果を合理的に整理・統合するコンソリデーションスキルなど、多岐にわたる知識・能力が求められます。特にAutomotive SPICEのような規格の理解や評価基準の適切な判断・対応ができるようになるためには、それ相応の知識や経験の積み重ねが必要であり、一朝一夕には習得できません。これから取り組もうとする企業やチームにとって、このハードルは決して低くありません。こうしたハードルを下げるために有効なのがAXIOMというツールです。
AXIOMを使い始めてからは、実務をこなしながら学習し、実務経験を通じてさらにスキルを高める“走りながら学ぶ”スタイルが実現可能になりました。ツールが知識や経験の不足を補ってくれるため、初心者アセッサーでも自信を持ってアセスメントを進められるのは大きなアドバンテージです。
今回は、AXIOMを活用する中で感じた、このツールの有効性とアセスメント実務における変化について、具体的な体験談を交えながらご紹介いたします。
3.Automotive SPICEアセスメントで直面する課題
実際にアセスメントを実施していると、PAM(プロセスアセスメントモデル)の知識不足や、インタビューで集めた所見の取りこぼし・矛盾など、大小さまざまな課題に頻繁に直面します。また、1〜2日以上を要する膨大なレビュー作業や、指摘を受けることへの心理的抵抗感によって、アセスメントを煩わしく感じる点も多く見受けられます。こうした難しさを抱えるたびに、「もっと効率的で確実な方法があれば」と感じることがしばしばありました。
そこで私が活用しているAXIOMにはAutomotive SPICEガイドラインや過去のアセスメント事例を学習した生成AI機能が搭載されており、次のようなメリットをもたらしてくれます。
1. 所見の質と一貫性の向上
- 所見情報が十分でない箇所を自動で指摘し、抜け漏れを防止
- 評定根拠と結論の整合性をチェックするため、矛盾した評定を防止
2. 矛盾の自動検出
- 複数プロセス間、同一プロセス内での所見の食い違いをAIが見つけてくれる
3. レビュー時間の大幅短縮
- 従来1~2日かかるレビュー作業が、ツール上で数分〜1時間ほどで一通り完了
- アセッサーは指摘されたポイントに集中するだけでよく、作業効率が格段に上がる
4. アセッサーの心理的負担を軽減
- ツールが24時間いつでもフィードバックを返してくれるので、提出前に何度でも確認可能
- 経験の浅いアセッサーでも、AIのサポートを得て所見をより正確に仕上げられる
このように、AXIOMを活用することで、専門知識や経験が不足している場合でもアセスメントを進めやすくなり、品質と効率を両立できる体制が整うと実感しています。
4.AXIOM導入で実感した効率化と品質向上
AXIOMの生成AI機能を活用するなかで、最も大きなメリットだと感じたのは所見間の矛盾検出が非常にスピーディに行える点でした。たとえば、あるプロセスの評価で「工数は十分だ」と記載しているのに、別のプロセスで「工数が不足して開発が停滞している」と書いてしまうと、両者は明らかな不整合を引き起こしています。これを人の目で見つけ出すには相応の集中力と時間が必要ですが、AXIOM上でチェックを実行すれば、わずか数分で矛盾を自動的に洗い出し、明確に指摘してくれます。
ツールによる所見の抜け漏れを防ぐ機能も非常に助かります。PAMの各項目に対してどの程度深く踏み込んだのかをAIが見極め、不十分な点を適切に示唆してくれるため、漏れなく情報を収集しやすくなりました。結果として、アセスメントの品質と信頼性が高まり、さらにレビュー作業に要する時間も大幅に短縮できるという好循環が生まれました。
5.“自走”するアセスメント組織づくりの可能性
冒頭でも触れたように、第三者視点による客観的なアセスメントは重要ですが、社内でアセスメントを実施しながら継続的に改善サイクルを回す仕組みこそが、品質を根幹から強化すると私は考えています。とはいえ、豊富な知識を持つアセッサーを育成するのは簡単ではありません。AXIOMのようなツールがあれば、一定レベルの評価をツールが支援しながら実務を進められるため、初心者アセッサーも安心して取り組めます。
そうして実際のプロジェクトを通じて経験を重ね、AXIOMのフィードバックをもとに学習し、スキルを徐々に高めていくことで、組織内にアセスメントのノウハウが徐々に蓄積します。アセスメントを担当する人員が増えれば、レビューのタイミングやアプローチも柔軟に調整しやすくなり、最終的には第三者アセスメントを必要最小限に抑えながら自走する体制へと移行できる可能性が高まります。
6.AXIOM活用支援と今後のご提案
AXIOMは日々進化しており、生成AI機能の精度やユーザビリティがさらに向上させることを検討しています。私自身もアセッサーとしての活動を続ける一方で、皆様が自走型のアセスメント組織を構築できるよう、AXIOMを活用した共同アセスメントを行っています。
引き続き、本メールマガジンにて生成AIを活用した具体的な事例を紹介してまいりますので、ぜひご覧いただければ幸いです。
2025/4/17 中武 俊典