【アセッサー育成シリーズ #3】アセスメントを社内文化として根付かせるために
前回(2025/4配信分)のメルマガでは、intacs認定トレーニングで得た知識を”使える力”へと発展させるための実践的なアプローチをご紹介しました。今回は、継続的なアセスメントを社内文化として根付かせるためのポイントについてご紹介いたします。
1. アセスメントが”一過性のイベント”になっていませんか?
アセスメントを受審するきっかけで多いのが、「顧客案件でアセスメント実施が要求されているから」という理由です。しかし、本来、プロセス改善のためのアセスメントのはずが、実際には能力レベル達成確認までの”一過性のイベント”になってしまっていることに釈然としない方もいるのではないでしょうか。一過性のイベントになってしまうと、せっかくのアセスメント活動が組織の継続的な成長につながらず、むしろ「コストだけがかかる形式的な活動」という印象を与えてしまう恐れもあります。プロジェクトマネージャーや品質保証担当者の皆様からも、「アセスメント結果は得られるが、その後の改善に活かせない」「組織全体でアセスメントの価値を共有できていない」といった課題をよくお聞きします。
2. 一過性のアセスメントが組織に与える影響
一過性のアセスメントでは、組織に継続的な学びや改善がなかなか根付きません。具体的には、以下のような課題が生じやすくなります:
- 現場の当事者意識の欠如
一過性のアセスメントになると、現場メンバーが「評価される側」として受け身になる傾向があります。その結果、アセスメント結果に対して評定の良し悪しに主眼が置かれ、改善に向けた具体的な行動につながりにくくなります。 - 改善効果の実感不足
アセスメント結果から改善アクションを立案しても、その効果を日常業務で実感する機会が少なくなるため、「本当に意味があるのか」という疑問が生まれやすくなります。特に、次のアセスメントまで長い期間が空いてしまうと、より改善の成果が見えにくくなります。 - 部門間の連携不足
開発・QA・マネジメント層それぞれが個別にアセスメント結果を受け取るだけでは、組織全体としての改善ストーリーが共有されず、断片的な取り組みに終わってしまいがちです。
3. “現場の主体性”がカギ-文化として根付かせる具体的アプローチ
ではどうすればよいでしょうか?1つのカギは”現場の主体性”にあると考えます。アセスメントを組織文化として定着させるには、「評価される側」から「自ら改善を推進する側」への意識変革が不可欠です。そのために、当社がこれまでご支援してきたアプローチの一部をご紹介します。
3-1. 定例化された改善ワークショップ
開発・QA・マネジメント層が一体となったクロスファンクショナルな定例の改善ワークショップを企画し、各部門の視点を統合した改善策を立案していきます。特に、技術的な課題とプロセス的な課題を同時に解決するアプローチが可能になることを目指しています。
3-2. 社内アセッサー育成の支援
「開発・QA・マネジメント層が一体となって推進していく」ためには、課題を深く分析できるレベルにまで詳細化された指摘・弱みが抽出でき、実効性の高い改善策を立案できるようなアセスメントの質向上が重要です。そこで当社では社内アセッサー育成プログラムとして、アセッサースキル基礎トレーニング+共同アセスメントをご提供し、社内アセッサーの育成とアセスメントの質向上を支援しています。改善の現場に質の高い社内アセッサーが配備されることでアセスメント⇔改善のサイクルが回りやすくなり、結果として主体性のある改善に繋がっていきます。実際のご支援例としては、社内アセッサー候補生の方に当社トレーニングを受講していただき、受講後に当社のリードアセッサーとアセスメントチームを組み、社内プロジェクトに対する共同アセスメントをすることで、実践力のあるアセッサー育成と改善サイクル定着のご支援を続けております。
3-3. 社内アセッサーを含めた現場主導の改善支援
社内アセッサーを含めた現場チーム自らがアセスメント結果を振り返る場を定期で設け、継続的な学びの機会を創出しています。常に現場の視点で課題を深掘りし、実現可能な改善策を検討するように促します。
3-4. 改善効果の継続的な監視とフィードバック
改善のアプローチにおいて、改善効果をプロジェクト中に監視しながら、改善を実感していくことが重要です。なぜなら、次のアセスメントを実施したタイミングで結果が分かるのでは実感できず、結果的にアセスメントに対してネガティブになりがちだからです。そこで当社では、管理者層が見たい改善効果も含めて、何を測れば改善効果を逐次確認できるか、または状態を知ることができるかをBIサービスで可視化する仕組みを提供しています。これにより、管理層も現場も改善の成果を継続的に実感でき、アセスメント活動への投資価値を明確に認識できるようになります。
(測定項目の例)
・プロジェクトメンバーに対する工数負荷状況
・開発生産性(1要求当たりの開発時間)
・見積誤差(見積工数/実績工数)
4. 「文化としてのアセスメント」が実現する自律的改善
「文化としてのアセスメント」が根付いた時、組織のプロセス改善は自律的に回り始め、以下のような好循環が生まれていきます:
- 現場主導の継続的改善
社内アセッサーが中心となって、日常業務の中で小さな改善を積み重ね、それが次のアセスメントで高い評価につながる循環が生まれる。 - 組織全体の品質マインド向上
アセスメントが「一部の部門だけの仕事」ではなく、「全社員が関わる改善活動」として認識されるようになり、組織全体の品質意識が向上する。 - 経営層のコミット強化
改善効果が定量的に示されることで、経営層からのアセスメント活動に対するコミットメントが強化され、より積極的な投資が行われる。
今こそ、継続的なアセスメントを「一部の部門だけの取り組み」に終わらせずに「開発・QA・マネジメント層が一体となって推進していく」ための第一歩を踏み出しませんか?詳しいご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。貴社の現状に合わせた最適なアプローチをご提案いたします。
各種お問い合わせ、コンサルティングのご依頼
https://biz3.co.jp/contact/
2025/6/4 長澤 克仁