アセッサースキル再入門
~「プロセスの評価者」から「業務改善のファシリテーター」へ~
これまで当社では、アセッサーのスキルアップに関するメールマガジンを、いくつかのテーマに分けてお届けしてきました。
しかし、時間の経過とともに、そこでお伝えした重要なポイントが少し埋もれてしまっているのではないか、
そんな危機感を、ここ最近、社内でも強く感じるようになりました。
そこで今回のメルマガでは、これまで個別に取り上げてきた「アセッサースキル」に関する内容をリバイバル版として再編集し、あらためて一つのストーリーとして整理してお届けしたいと思います。
「今まさにアセッサーとしてスキルを磨いている方」
「これから社内アセッサー育成を進めたいと考えている組織」
という皆さまにとって、過去記事の“総集編”として、そして「次の一歩」を考えるきっかけとして、ご活用いただければ幸いです。
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1. なぜ今あらためて「アセッサースキル」なのか
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Automotive SPICEを活用したプロセス改善が広がるなかで、
「アセッサー資格は取得したものの、
アセスメントの経験を積める機会も少なく実際のアセスメントの進め方に自信が持てない」
というご相談をいただく機会が増えています。
ご存じの通り、資格取得はゴールではなく「スタートライン」です。
アセスメント経験を積みながら、アセッサーとしてステップアップし、自律的にアセスメントを実施できるリードアセッサーを目指すためには、
アセスメント計画の立案、プロジェクト状況の理解、情報収集と評定、そして結果報告まで、現場をリードする多様なスキルの習得が求められます。
近年は、プロセス改善にとどまらず、
日々の業務オペレーションそのものを効率化・高度化していく「業務改善」へのニーズが高まっています。
この流れの中で、組織内に「社内アセッサー」を育成し、小さなアセスメントと改善を高頻度で回していく取り組みが広がっています。
そこでは、単なるチェック役ではなく、
「業務改善のファシリテーターとしてのアセッサー」
が重要な役割を担っています。
そこで本リバイバルでは、過去のメルマガでお伝えしてきた
・アセッサーに求められるスキルセット
・段階的なスキルアップの考え方
・社内アセッサー育成のポイント
というポイントを、あらためて一本のメッセージに集約してお届けします。
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2. アセッサーに求められる 5つの基礎スキル
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当社では、効果的なアセスメントを実施するための基礎スキルとして、次の5つを重視しています。
(1)PAM(プロセスアセスメントモデル)の知識
・アセスメント対象プロジェクトの実情に合わせて、PAMの要求を適切に読み替え・解釈できる力。
・「どの文言に当てはまるか」だけでなく、「なぜこの BP/GP が求められているのか」という背景や意図まで含めて理解することがポイントです。
(2)技術ドメインの知識
・運転支援や自動運転機能の搭載に伴う自動車のE/Eアーキテクチャの進化によって、
ソフトウェア開発に加え、機能安全、サイバーセキュリティ、そして近年では機械学習(AI)、データマネジメントなど、対象システムに応じた技術的背景の理解が欠かせません。
・技術の本質を押さえることで、「形式的なプロセス遵守」にとどまらない、実効性のあるアセスメントにつながります。
(3)インタビュースキル
・限られた時間の中で、必要な情報を漏れなく深く引き出すための質問力。
・事前のインタビュー戦略立案、当日の進行、話しやすい雰囲気づくり、そして答えにくいテーマをどう扱うか
これらを含めて「インタビュースキル」と捉えています。
(4)コンソリデーションスキル
・抽出された強み・弱みを整理し、PAM上のどの指標に対応するのかをマッピングする力。
・プロジェクトの文脈を踏まえながら、アセッサーチーム内で矛盾のない評定にまとめていく力が求められます。
(5)報告スキル
・経営層・マネジメント層・現場メンバなど多様なステークホルダに対し、
「何ができていて、何が課題なのか」というポイントをわかりやすく伝える力。
・単に結果を読み上げるのではなく、「改善につながるストーリー」としてレポートすることが重要です。
これらのスキルは、PAMやプロセスの知識に加えて、
対人スキルと分析スキルを組み合わせた、まさに総合力としてのアセッサースキルです。
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3. 段階的にスキルを高める 4つのステップ
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過去のメルマガでは、アセッサースキルを高めるためのステップを、次の4段階で整理していました。
Step 1:Automotive SPICE の基礎を知る
Step 2:プロセスアセスメントモデル(PAM)の体系的理解
Step 3:アセスメント実施のためのスキル習得
Step 4:実アセスメント経験の蓄積
資格取得に加えて、こうしたステップを意識しながら
「学ぶ → やってみる → 振り返る」サイクルを回すことが、アセッサーとしての成長を着実に加速させます。
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4. 社内アセッサー育成と Biz3 のトレーニング
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プロセス改善だけでなく、業務改善を継続的に進めている組織の多くには、
共通して「社内アセッサー」の存在があります。
・組織内の状況に合わせて柔軟にアセスメントが実施できる
・プロジェクトを越えた横断的な傾向分析ができる
・改善サイクルを高頻度で回せる
これらは、社内アセッサーを育てる大きなメリットです。
そのため弊社では、
・認定トレーニングで得た ASPICE の知識を実務で使える形に落とし込むこと
・前述の 5 つの基礎スキルを演習と実習で伸ばしていただくこと
を目的として、
・アセッサースキル基礎トレーニング
・実プロジェクトを対象とした共同アセスメント
を組み合わせた育成プログラムをご提供しています。
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5. おわりに ― リバイバルから“次の一歩”へ
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今回のリバイバル特集では、過去のメールマガジンでご紹介してきた
アセッサースキルに関するエッセンスを再整理してお届けしました。
少しずつでも取り組みを続けることで、
組織全体の品質や生産性だけでなく、「業務改善力」の底上げにつながっていきます。
「自社のアセッサー育成をこれから本格的に進めたい」
「現場でアセッサースキルをさらに活かしたい」
という課題をお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。
【関連トレーニング及び資料リンク】
・アセッサー育成支援コース intacs認定プロセスエキスパート(PE)
・アセッサー育成支援コース intacs認定プロビジョナルアセッサー(PA)
・アセッサー育成支援コース アセッサースキル基礎トレーニング
・Automotive SPICE(アセッサー向け)
2025/11/19 田渕 一成