最近、Automotive SPICEに関するトレーニングを実施した際に受講者の方から「Automotive SPICEの規格を読んでも実際に何をすればいいのかわからないのですが、なぜ規格には具体的な活動(手法や手段)が詳しく記載されないのですか。」といった質問を多く受けます。質問に対する回答ですが、「Automotive SPICEは、“何(What)をすべきか”を記載しており、“どのように(How)” を記載していない規格だから“手段や方法”を記載していない」となります。このように規格の位置づけを正しく理解しないまま規格を解釈しようとすると、「Automotive SPICEではアジャイル開発(手段や方法)が出来ない」といった誤った解釈につながってしまいます。(“何(What)をすべきか”と“どのように(How)”は相反することではないため)
今回はこのような誤った解釈をしないために「Automotive SPICEの正しい読み方」をご紹介したいと思います。それでは、Automotive SPICEにはどのような内容が記載されているかを説明いたします。
Automotive SPICE(Ver3.0以降)には「PRM:プロセス参照モデル」「PAM:プロセスアセスメントモデル」の2つのモデルが記載されております。これらのモデルは、以前はAutomotive SPICE 2.5(PAM)、Automotive SPICE 4.5(PRM)と別々の規格として管理されていたのですが、Automotive SPICE 3.0で一つの規格として統一されました。
この2つのモデルの違いは何かというと、各プロセスの目的や成果を理解しプロセス改善を行うために参照するPRM(プロセス参照モデル)、アセッサーが評定するために参照するPAM(プロセスアセスメントモデル)となります。
具体的な記載内容の違いは、PRMは各プロセス目的やプロセス成果のみが記載されており、PAMでは、そのプロセス成果に紐づく各プロセスのBP(基本プラクティス)、WP(作業成果物)と、各能力レベルについて記載されております。現在発行されているAutomotive SPICE 3.0以降では、個別に記載されるのではなく、PAMの中にPRMが含まれた形で表現されています。
上記のことより、Automotive SPICEをプロセス参照モデルとしてプロセス改善に用いる場合は、各プロセスに記載されたプロセスの目的、成果を最初に読み、その目的、成果を達成するための必要な活動を自分たちの活動に当てはめ、達成できていない成果に対して改善点を考える事となります。そして、その改善点を考えるヒントして、アセッサー視点のBPやWPの内容を読むのが正しい読み方になります。
皆様がAutomotive SPICEをより改善に役立たせるためにいま一度、Automotive SPICEを正しい読み方で読んでいただければと思います。
今回の「Automotive SPICEの正しい読み方」で紹介した内容の詳細は、「Automotive SPICE 3.1 プロセス基礎トレーニング ~概論~」で解説しております。本トレーニングは次回9月開催から内容をリニューアルし、8月末に改訂されます「Automotive SPICE ガイドブック」を活用した講義へと充実化を図ります。是非ご受講をご検討ください。また、アセッサー視点の読み方を知りたい方は、「intacs認定アセッサートレーニングを受講されることをお勧めいたします。
2019/08/06 山内 誠