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「Automotive SPICE 4.0 実践ガイドブック」の見どころ(前編)

 2023年6月にAutomotive SPICE 4.0(ドラフト版)が発行されてから、当社は、Automotive SPICE 4.0に関する最新情報をメルマガ、Automotive SPICE 4.0アップデートトレーニングとして皆様にお伝えしてきました。これらの活動と並行して、2024年1月販売開始予定の「Automotive SPICE 4.0 実践ガイドブック」の執筆を進めています。本メルマガでは、実践ガイドブックの見どころを紹介いたします。

 執筆中のガイドブックは、現在販売されている「Automotive SPICE 3.1 実践ガイドブック」のコンセプトである「プロジェクトで実施すべきこと、改善活動のヒントを体系的に伝えること」を継承しています。その理由の一つは、7月のメルマガで紹介したVDA、およびintacsからの以下の見解が重要であると考えているからです。(https://biz3.co.jp/download/5486
・プロジェクト/組織がバージョン4.0に合わせてプロセスを変える必要はない
・PAMに記載されている情報だけに基づいてプロセス改善に取り組むべきではない
・PAMはプロジェクト/組織が従うべき技術標準ではない

 プロセス改善活動の目的が、顧客から要求されている「能力レベル1」、「能力レベル2」の達成に置き換わっていると、適用するAutomotive SPICEのPAMのバージョンに合わせて、その内容を満たすように、プロセスを変えることが起こるのではないでしょうか。能力レベルの概念は、Automotive SPICEを用いてプロセス能力を評価する時の観点として定義さたもので、プロジェクト活動に展開した際の関係性を理解し、プロセスの活動として実施することが重要です。その関係性を理解するために、下図のように、各プロセスに対して、担当メンバーによって実施される活動(能力レベル1に該当、水色の箱)とプロジェクトレベルで管理された活動(能力レベル2に該当、紫色の箱)をそれぞれ詳細に解説しています。

 更に、Automotive SPICE 4.0で、ハードウェアエンジニアリングが追加されたことで、製品開発全体で見た時に、最適なプロジェクト活動の実施がより重要になります。その点を考慮して、技術領域(システム/ソフトウェア/ハードウェア)間で共通の活動に関しては、少し高い抽象度で活動を捉え、各技術領域に合わせて、その活動の観点をガイドブックでは具体的に解説しています。
 例えば、要求分析プロセスは、システム、ソフトウェア、ハードウェアそれぞれで必要なプロセスですが、実施すべき活動は共通です。「要求を分類、および構造化する」活動の例では、分類の観点が重要です。観点例として、「性能」を考えると、以下のように各技術領域で具体化された項目が挙げられます。
・「システム要求」における性能に関する観点:応答時間、消費電力、熱、振動、音、EMC、マイコンなど
・「ソフトウェア要求」における性能に関する観点:応答時間、リアルタイム性、マイコンなど
・「ハードウェア要求」における性能に関する観点:応答時間、消費電力、放熱/冷却、EMC、周波数特性、マイコンなど
 このように、技術領域に共通する活動やその観点、および具体例が、各技術領域のガイドブックを横断して一貫していることで、プロジェクトに適用する際に、一貫したプロジェクト活動に置き換えることが容易になります。

 また、ソフトウェアのみの開発プロジェクトの場合、システム要求やシステムアーキテクチャに全く影響がなければ、利害関係者要求(SYS.1)をシステム要求(SYS.2)として扱い、ソフトウェア要求(SWE.1)間で、直接的なトレーサビリティを構築するのが適切と考えられます。一方で、PAMに記載されているプラクティスは、そのまま実装しなければならないという誤解から、このようなケースにおいて、利害関係者要求をシステム要求(SYS.2)に転記し、ソフトウェア要求(SWE.1)に渡すような活動になっていないでしょうか。この場合、システム要求を経由する活動が冗長となり、トレーサビリティの維持やチェック作業が発生します。この例のように、プロセス構築する上で、どのように扱うべきか判断が難しいケースもガイドブックで解説しています。

「Automotive SPICE 4.0 実践ガイドブック」を使用したプロセス基礎トレーニングの内容もリニューアルいたします。ガイドブックではページ数の制約上、紹介できなかった具体例をトレーニングの中で紹介していきます。特に、過去のプロセス基礎トレーニングで質問が多く出た「具体的なテンプレートの構成内容」、「プロセス内のタスクを定義する際の大きさ」についても、具体例で紹介しますので、ご期待ください。

トレーニングの詳細は下記をご参照ください。
トレーニングコース名:Automotive SPICE 4.0 プロセス基礎トレーニング
開催日:2023/12/11(月)~12/15(金)
お申込み先:https://biz3.co.jp/publictraining_category/automotivespiceengineer

2023/11/10 小西 晃輔