故障率計算の“技術的な勘所”を掴む
―機能安全ワークショップのご紹介
故障率の算出は、安全分析の出発点 ―定量的安全分析の基盤としての重要性
機能安全設計において、故障率の算出はPMHFやFMEDAなどの定量的安全分析の基盤となる重要な要素です。
特にハードウェア開発においては、構成部品ごとに故障率を算出し、安全分析の入力値として使用することが求められます。
このプロセスは、ISO 26262に準拠した安全目標を定量的に評価するために不可欠であり、設計初期から故障率の妥当性を確保する必要があります。
現在主流となっているIEC 61709およびSN 29500は、かつて広く使われていたIEC/TR 62380の代替として採用されており、ISO 26262第2版以降では62380が参照情報から削除されています。
しかし、IEC 61709やSN 29500では、ミッションプロファイル(温度・稼働時間などの使用条件)が明示されておらず、単一温度条件での計算が前提となっているため、実際の車載環境に即した故障率算出には工夫が求められます。
規格をどう実務に落とし込むか ―IEC 61709/SN 29500の適用ポイント
弊社が提供する機能安全実装ワークショップ ~基礎故障率の算出とメトリック評価~では、IEC 61709およびSN 29500に基づく故障率計算の基本式を起点に、算出時に考慮すべき要素(温度、稼働時間、環境条件など)を体系的に整理します。
特に、ミッションプロファイルが不明な場合の対応としては、IEC/TR 62380の温度フェーズを参考にした平均化手法の適用や、使用条件を想定したモデル構築のアプローチを取り上げ、実務での応用に向けた判断軸を提示しています。
このような手法は、OEMからの情報提供がないケースでも、設計者自身が合理的な前提を設定し、故障率を見積もるための有効な手段となります。
また、社内標準としての故障率計算モデルの整備に向けて、どのような要素を含めるべきか、どこまでの粒度で定義すべきかといった観点も議論されます。
こうした内容は、単なる規格の読み解きではなく、実際の設計・評価業務に直結する“技術的な勘所”として、参加者の関心を集めています。
実務で直面する課題に、どう対応するか ―議論から得られる技術的ヒント
演習では、部品ごとの故障率を算出する際に、使用条件の違いや温度変化をどう反映するか、また、FMEDAとの連携をどう考えるかといった実務的な課題に取り組みます。
「OEMからの情報提供がない場合の対応」「社内での標準化の進め方」など、現場で直面する課題に対して、参加者同士の議論を通じて多角的なアプローチを共有する場となっています。
参加者からは、「故障率の細かい中身が理解できた」「新しい視点が得られた」といった声が寄せられ、現場での活用に向けた“相場観”を養う場として高く評価されています。
“現場で使える力”を高めるために ―実践型ワークショップの価値
機能安全実装ワークショップは、アセスメントから設計・評価に至るまで、実務に即したテーマをもとに議論や検討を重ねながら、現場で役立つ視点や相場観、課題解決のヒントを得ることを目的とした実践型プログラムです。
本ワークショップでは、故障率の算出やPMHF・EECの評価を実際に行えるようになることを到達目標としています。
実際の故障率算出や安全指標評価に取り組む演習も含まれており、理解を深めながら、実践力を養う構成となっています。
単なる理論理解にとどまらず、実務で使える「計算・評価スキル」を身につけることができます。
初めて故障率計算に取り組む方はもちろん、既に業務で関わっている方にも、実務に直結する知見を深め、スキルを体系的に整理する機会となる内容です。
「規格を読んでも実務に落とし込めない」「社内での共通理解が得られない」といった悩みをお持ちの方にこそ、ぜひご参加いただきたい内容です。
ワークショップの詳細や関連情報は、弊社Webサイトにてご紹介しています。
日々の業務に直結するスキルを高める手段として、ぜひご活用ください。
【関連トピックおよびワークショップ】
1)機能安全実装ワークショップ
https://biz3.co.jp/service/training/8629
2)IEC61709およびSN29500に基づく部品故障率計算における課題
https://biz3.co.jp/download/6889
2025/10/22 大塚 愁